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[BCG04-P10] 白亜紀アプチアン海洋無酸素事変OAE 1a時期の遠洋深海層状チャートでみられた遠洋域での陸上植物の堆積
キーワード:OAE 1a、陸上植物、温暖化、白亜紀
海洋無酸素事変が多発した白亜紀の中でもAptian(~120 Ma)に起きたOAE 1aはオントン・ジャワ海台での顕生代最大規模の火成活動に伴い,大気pCO2が約800-1000 ppmから2000±1200 ppmに倍増し,海面水温の4-8 ℃の温暖化を伴った(Naffs et al., 2016; Naafs and Pancost, 2016).OAE 1aでは数10万年スケールで4 ‰に及ぶ炭素同位体比の負と正のシフトが世界各地で確認されているが,高知県四万十帯横波メランジュ中の遠洋深海層状チャートでは他セクションで見られない万年スケールで最大5 ‰の変動が複数確認されている(庵谷他,2009;Kuroda et al., 2015).そのため,同位体比の異なる有機物の量比が変化した可能性がある.そこで,五色の浜のHauterivianからCenomanianの層状チャート44試料の有機質微化石抽出を試みた.その結果,34試料からクチクラ,糸状藻類といった有機質微化石やアモルファス有機物が4000 個以上見つかり,特に陸上植物起原の仮道管と確認出来る構造を持つ木片や樹脂がAptianで数100 個(15試料),Hauterivianで2 個(1試料)得られた.万年スケールで炭素同位体比が負の層準に陸上植物が最大65 %含まれることから,短期的な変動のいくつかは¹²Cに富む陸上植物の混入が影響した可能性が示唆される.ただし,数10万年スケールで炭素同位体比の負のピークで陸上植物は少ないため,Kuroda et al.(2015)の炭素同位体比層序対比は大局的に支持される.陸上植物が比較的多く産出した層準は,炭素同位体比の負のシフトの層準に対比され(Naffs et al., 2016;Naafs and Pancost, 2016),CO2濃度が上昇し温暖化した時期に対応する.従って,植物の成長促進や最大∼100 mの海水準変動,嵐など水循環が強化されたことで海洋への陸上植物の流出が増加し,遠洋深海まで運ばれた可能性が示唆される.