日本地球惑星科学連合2021年大会

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[J] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] 地球惑星科学のアウトリーチ

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.03

コンビーナ:小森 次郎(帝京平成大学)、長谷川 直子(お茶の水女子大学)、塚田 健(平塚市博物館)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)

17:15 〜 18:30

[G02-P02] アウトリーチ対象が関心を持つ天文環境とそれを活用したアウトリーチ手法

*土屋 美雪、榎本 美絵

キーワード:アウトリーチ、フーコーの振り子、東京ディズニーシ―、占星術

アウトリーチの質の向上のためには、その対象が関心を持つ天文環境の現状を把握し、その天文環境を活かしたアウトリーチ手法を採ることが有効である。本稿は、アウトリーチ対象が日常的に関心を持つ天文環境として、東京ディズニーシーを採りあげ、その具体的天文環境について、先行研究も踏まえつつ、新たな知見を加えて検討する。次に、同様に関心の高い占星術について、吉岡修一郎「占星術と天文学との関係、その歴史」(1943、天界)を採りあげ、占星術をどのように捉えるべきかについて検討する。そして、関心のある天文環境を活かしたアウトリーチ手法として、現在、東京ディズニーシーを含む全国59箇所に設置されている「フーコーの振り子」をシンボルとした各組織・団体によるサミットの開催を提案する。


1.東京ディズニーシーにおける天文環境をアウトリーチに活用する際の留意すべき点

東京ディズニーシー(以下、ディズニーシー)は、年間平均約3000万人が訪れる、アウトリーチ対象にとって日常的に関心の高い環境である。先行研究である、相場博明、柊原礼士、鍋島さやか「人工物を活用した地学学習 : 東京ディズニーシーにおける地学素材の活用を例として」(地学教育 61(4), 133-139, 2008-07-25)、下村知愛、高橋典嗣「東京ディズニーシーにおける地学教材の活用」(宇宙教育研究、(1), 85-89, 2020-07-07) により、ディズニーシーは主なものだけでも11種の天文事物を有し、充実した天文環境である事は、すでに詳細に把握されている。しかし、そこで指摘されている点の一つは、地動説のみならず、天動説に即した天文事物も設置されている点であるが、その事実のみが指摘されているだけである。アウトリーチ手法としてディズニーシーを活用する際には、天動説から地動説への天文学の歴史を説明する材料として、積極的に捉えることを提案する。また月齢を示す地面の石張りの位置が、通常と逆になっている点についても、その理由は明らかでないとしても、逆であることをアウトリーチ対象に正確に指摘するべきである。


2.吉岡修一郎「占星術と天文学との関係、その歴史」(1943、天界)を踏まえた、天文学の歴史としての占星術

吉岡修一郎は「占星術と天文学との関係、その歴史」(1943、天界23(268), 305-310, 1943-10-25及び23(269), 344-347, 1943-12-28)において、バビロニアで生まれた占星術は天文学と一体のものであり、またそこで生まれたものは単位の体系等、現代生活の基礎にも活かされていることを指摘している。占星術はいわば、天文学の生き証人であり、天文学の歴史を体現したものである。そして、それが現代の基準に照らして、たとえ非科学的なものであるとしても、天文にまつわる文化として現代社会に受け継がれていることは確かである。その点において、宗教に近いものと考えられ、初詣等の日常の年中行事と同類のものとして冷静に捉えるべきである。



3.アウトリーチ手法としての「フーコーの振り子」サミット開催の提案

1.で検討したように、ディズニーシーには他の天文事物と共に巨大な「フーコーの振り子」が設置されている。ここで現在、全国に設置されている「フーコーの振り子」の数をみると、計59箇所に及ぶ。そこで、この「フーコーの振り子」を設置している各種組織・団体がネットワークを組み、「フーコーの振り子」をシンボルとしたサミットを開催し、広く天文に関心をもってもらう機会とすることを提案する。サミットの内容としては、単に天文そのものの知識のみならず、さまざまな形で天文事象を扱う分野、領域の研究者の参加を想定する。具体的には、文学、絵画、映画、建築、都市計画、暦、年中行事、ネーミング、占星術、宗教、政治等の領域を想定する。