日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS08] 人間環境と災害リスク

2021年6月6日(日) 17:15 〜 18:30 Ch.09

コンビーナ:青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、佐藤 浩(日本大学文理学部)

17:15 〜 18:30

[HDS08-P04] 自助と共助による災害時ごみ処理作業単位量の試算

*水井 良暢1,2 (1.筑波大学、2.防災科学技術研究所)

キーワード:自助、共助、災害ボランティア、災害ごみ、ごみ処理

1.はじめに
近年,日本国内では毎年のように甚大被害を伴う広域災害が各地で発生している.被災者が自助活動として行う自宅の片づけ作業では常に人員が不足する.その不足分を補うために地域内外から自発的に参加する,共助活動である災害ボランティアの存在がある.
筆者は,2011年3月11日の東日本大震災以降,各地の災害ボランティアセンター運営に関わり,被災現地での実作業量と,必要とされる災害ボランティア人員調整の難しさを実感してきた.人員調整の課題を解決するためには,実行しないといけない作業量と,自助と共助における活動者の全体数を把握し,全体の中の共助部分の人数の内訳を明確化することが重要である.
今回の研究では自助と共助の区分けまでは行わずに,まず過去の災害における自助と共助を合算した活動延べ人数を調べ,大まかな推定値を導き出すために必要な処理量単位となる自助と共助における100人単位の災害時ごみ処理作業単位量を試算した.

2.調査方法
災害で発生する災害ごみの総量を把握し,その中で自助と共助が処理作業を担当する内訳量を区分けする.対象とする災害ごみは,民地の敷地内にある人力で片付けることができるごみである.ごみの内訳に関しては環境省が災害ごとに調査し報告しており,自助と共助が対象とするのは災害廃棄物に位置図けられている中の片付けごみ(市民が自宅内にある被災したものを片付ける際に排出される廃棄物)であり,片付けごみは,可燃物,木くず,畳,不燃物,家電廃棄物などが相当すると考えられる.この片付けごみ量を自助と共助の活動量で割ることにより自助と共助による片付けごみ処理作業単位量を求めることができる.

3.結果
2015年鬼怒川水系の常総市水害をモデルに計算を実施した.対象とする期間は常総市災害ボランティアセンターが活動していた期間である58日間とした.避難指示が発令された地区の住民人口の1/4が自助活動の人数であると仮定し,災害ボランティアセンターにて活動した災害ボランティアの延べ人数と合計すると,58日間で504,842人が活動者数となった.なお,2015年水害の災害ゴミ総量は52,400tである.
片付けごみは可燃物と不燃物と土砂であるとし,条件①として可燃物はほぼ生活ごみとして100%,不燃物と土砂は50%と仮定した試算を行った.また条件②として可燃物100%,不燃物と土砂は25%と仮定した試算を行った.なお可燃物と不燃物・土砂の重量比は今回無視することとする.
条件①の場合,ごみ全体量のうち可燃物6.4%,不燃物70.5%は半分で35.25%,土砂12.0%は半分で6.0%となり,対象とする片付けごみの割合と,重量は,
6.4 + 35.25 + 6.0 = 47.65%
52,400t × 47.65 = 24,968.6t
この片付けごみを,504,842人で処理をしたと仮定すると,100人当たり,4.946t を処理できることになる.
条件②の場合,可燃物6.4%,不燃物70.5%は1/4で17.625%,土砂12.0%は1/4で3.0%となり,対象とする片付けごみの割合と,重量は,
6.4 + 17.625 + 3.0 = 30.025%
52,400t × 30.025 = 15,733.1t
この片付けごみを,504,842人で処理をしたと仮定すると,100人当たり,3.116t を処理できることになる.
また,環境省の片付けごみ量の推計式を用いた場合は,おおよそ9541.933t が片付けごみの総量と推計される.504,842人で処理をしたと仮定すると,100人当たり,1.890t を処理できることになった.
結果として,3t(2~5t)/100人が,自助と共助の活動者が1日に処理できる災害時ごみ処理作業単位量であることが導き出せた.1人当たりでは,30(20~50)kgの作業量となった.