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[HDS09-P04] 津波計算における地震時すべり量分布の必要性に関する検討:2015年Illapel地震津波および2017年Chiapas地震津波によるケーススタディ津波計算における地震時すべり量分布の必要性に関する検討:2015年Illapel地震津波および2017年Chiapas地震津波によるケーススタディ
キーワード:津波シミュレーション
1960年Chile地震によって発生した津波は太平洋を横断し,気象庁による警報の発令が津波到達後であったことから,日本の太平洋沿岸に被害を与えた.2015年Illapel地震(以下,Illapel地震)と2017年Chiapas地震(以下,Chiapas地震)も津波を励起した.先行研究のインバージョン解析により,Illapel地震とChiapas地震の高精度な断層モデルは提案されている.このような高精度なすべり量分布は,津波の予測精度を向上させるだろう.しかし,地震発生直後の限られた時間で,高精度なすべり量分布を求めることは一般に困難である.そこで,本研究では,Illapel地震とChiapas地震を利用したケーススタディとして,津波計算における地震時すべり量分布の感度を調べた.本研究の問いは,どれほどの精度の地震時すべり量分布が即時の津波予測において必要であるか?であり,具体的には,すべり量分布を考慮した場合と考慮しない場合の津波を計算し,DARTで観測された津波波形と比較した.
解析では,USGSの震源モデルから地殻変動を計算した後,鉛直変位に,海底斜面の水平変位の効果,Kajiura Filterを適用して初期水位を求めた.津波の伝搬は,非線形長波理論式を差分法で解くことによりシミュレートしたが,波数分散性,地球の弾性変形,海水密度成層構造を考慮できるモデルを利用した.観測津波波形と計算津波波形の誤差は二乗平均平方根で評価した.
Illapel地震の解析では,すべり量分布を考慮した場合の計算津波波形の方が,考慮しないものよりも,観測津波波形をよく再現した.一方で,Chiapas地震における解析では,すべり量分布を考慮した場合の方が,すべり量分布を考慮しない場合よりも,観測波形の再現精度が低かった.そこで,Chiapas地震のすべり量分布のすべり量を半分に軽減したところ,観測波形の再現性が向上した.すべり量を半分にするということは,マグニチュードが0.2小さくするということを意味する.地震波によるマグニチュードの推定精度から言えば妥当な範囲であるが,このことはすべり量分布だけでなく,地震の規模を正確に求めることが,津波予測において重要であることを示唆している.
解析では,USGSの震源モデルから地殻変動を計算した後,鉛直変位に,海底斜面の水平変位の効果,Kajiura Filterを適用して初期水位を求めた.津波の伝搬は,非線形長波理論式を差分法で解くことによりシミュレートしたが,波数分散性,地球の弾性変形,海水密度成層構造を考慮できるモデルを利用した.観測津波波形と計算津波波形の誤差は二乗平均平方根で評価した.
Illapel地震の解析では,すべり量分布を考慮した場合の計算津波波形の方が,考慮しないものよりも,観測津波波形をよく再現した.一方で,Chiapas地震における解析では,すべり量分布を考慮した場合の方が,すべり量分布を考慮しない場合よりも,観測波形の再現精度が低かった.そこで,Chiapas地震のすべり量分布のすべり量を半分に軽減したところ,観測波形の再現性が向上した.すべり量を半分にするということは,マグニチュードが0.2小さくするということを意味する.地震波によるマグニチュードの推定精度から言えば妥当な範囲であるが,このことはすべり量分布だけでなく,地震の規模を正確に求めることが,津波予測において重要であることを示唆している.