日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 浅部物理探査が目指す新しい展開

2021年6月3日(木) 10:45 〜 12:15 Ch.15 (Zoom会場15)

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、青池 邦夫(応用地質株式会社)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、高橋 亨(公益財団法人深田地質研究所)、座長:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

11:10 〜 11:30

[HTT17-09] 電気探査法による連続繰り返し測定データの差トモグラフィによる解析 -降雨による土壌水分量変化のモニタリングへの適用-

*綿谷 椋多1、鈴木 浩一2 (1.北海道大学大学院工学院共同資源専攻、2.北海道大学大学院工学院研究院環境循環システム部門地圏循環工学分野)

キーワード:電気探査法、差トモグラフィ、RMS残差

将来,大規模な地すべりが発生する可能性のある斜面においては,集中豪雨時の斜面全体の地下水挙動を評価する必要があり,長期間雨水の浸透状況をモニタリングできる手法を確立することが重要である。しかし,電気探査法による測定データだけでは,降雨浸透に伴い斜面部の飽和度がどの程度変化したのか定量的に評価することは困難である。ここで,ロックフィジックス分野で示されている未固結砂モデル(Avseth et al., 2005)を用いた適用事例として,鈴木ほか(2018)は未固結地盤を対象として比抵抗とS波速度から間隙率と飽和度を算出している。本報では,常総台地に形成された斜面部において繰り返し測定した電気探査データに対し,杉本(1995)による差トモグラフィ解析を行い,比抵抗変化率断面を求めた。また,同一測線で行なわれた表面波探査により得られたS波速度構造を組み合わせて,鈴木ほか(2018)で示された解析フローにしたがい,降雨浸透に伴う飽和度の変化率断面を推定した。その結果,差トモグラフィ解析結果の方が従来解析法よりRMS残差は小さくなり,地質構造との整合性が認められた。また,飽和度の変化率断面では,地表面より飽和度が増加した領域とその下部に飽和度が低下した領域が現れ,粘土質層より下部の領域では飽和度の変化は僅かとなった。

参考文献
Avseth, P., Mukerji, T. and Mavko, G. Quantitative seismic interpretation, Cambridge University Press, 2005.
杉本芳博 (1995):比抵抗トモグラフィによる電解質トレーサーのモニタリング-数値的検討-,物理探査学会第92回学術講演会講演論文集, 57-62.
鈴木浩一ほか(2016):比抵抗法による地すべり斜面における集中豪雨時の浸透水のモニタリング,物理探査, 69(2), 103-116.
鈴木浩一ほか(2018):物理探査法による地中送電線周辺土壌の固有熱抵抗の評価(その2)-統合物理探査データを用いた未固結砂の熱抵抗プロファイリング-, 物理探査, 71, 1-14.