日本地球惑星科学連合2021年大会

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[O-04] GIGAスクールと地球惑星科学教育:オンライン授業からの示唆

2021年6月6日(日) 10:45 〜 12:15 Ch.01 (Zoom会場01)

コンビーナ:飯田 和也(駒場東邦中学高等学校)、岩田 真(広島県立大柿高等学校)、宮嶋 敏(埼玉県立熊谷高等学校)、秋本 弘章(獨協大学経済学部)、座長:秋本 弘章(獨協大学経済学部)、浦中 翔(大阪工業大学大学院)、宮嶋 敏(埼玉県立熊谷高等学校)、飯田 和也(駒場東邦中学高等学校)

11:30 〜 11:45

[O04-10] 新たな講義への模索 ーオンライン双方向講義の試みー

★招待講演

*木戸 ゆかり1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:GIGAスクール構想、オンライン講義、双方向

2021年1月から国連海洋科学の10年がスタートした.持続可能な開発目標SDGsへの地球規模の取り組み,最新海洋調査の動向,未来の地球環境問題,我々の生活に欠かせない身近な海,もっと海のすべてを老若男女に伝えていきたい.ともに考えていきたい.現在海洋調査を職業とし,この道に偶然入った自身を振り返ると,小中高校までの学校教育の場で「海」に関して学んだ機会は少なかった.しかしながら昨今の自然災害,環境破壊,身の回りで起きている事象を考えるのに「海」はなくてはならない対象である.海洋調査を行っている者が,もっと学校教育の場へ働きかけられないか,交流を持てないか,模索を続けてきた.現場での調査,航海準備,データ解析,報告書作成といった業務の合間にできる情報提供の機会は少なく,学校側もすでに確立したカリキュラム内に取り入れる枠や余地がなく,学びの機会自体が減っていた.そのため,海洋方面を目指す学生数自体が少なく,一握りの学生が専門分野に進学し,関連の研究室に入って初めて,海洋調査に触れるといったケースが現状である.特に地震国の日本では,海溝型地震,津波のメカニズムを学び,防災・減災に向けた海底ネットワーク敷設や緊急地震津波速報へつながるデータ解析,海底を掘削して得られた掘削試料の分析や物理探査の解釈など,日本が全力で取り組むべき課題に溢れている.子供たちに「海」に触れる機会を与えるとともに,伝えていく教員や若手人材育成が欠かせない.そのような学びの機会を増やす一環として,航海中の船上と学校をオンラインで結び,現場の様子を伝える試みを行った.例えば,1.2019年1月には,南海トラフにて航海中の「ちきゅう」と静岡のSSH3校合同で繋ぎ,白熱した船上でのオペレーションの様子を伝えた.また,2.2020年1月には,南太平洋上の米国科学掘削船「Joides Resolution」号の航海中に乗船者の協力のもと,名古屋のSSH校とのオンライン授業が実現した.現場と高校生とを繋ぐ新たなコミュニケーションの常設化を目指し,その後の航海でも続ける予定であった.COVID-19の影響により,現場作業が著しく縮小し,イベント活動も一変した.対面講義ができない中,インターネットを用いたオンライン講義のノウハウが一気に進化し,7月以降の見学会・出前授業は,オンラインで行われた.その中でGIGAスクール構想にいち早く舵を切り,IT化を進めた学校と連携することができた.生徒一人ひとりにタブレットを整備し,新規回線を引き,いち早くオンラインソフトを導入し,生徒指導に取り組まれた埼玉県立熊谷高校と双方向講義が実現した.COVID-19影響下で,施設見学が中止になり,船舶一般公開も縮小し,現場作業を伝えることが困難になっていた中,また学校側でも休校が余儀なくされた中,新たな企画が実現していた.学校教育の先生方のご尽力でスラックが立ち上がり,情報共有が進行していたのである.事前にオンラインソフトを用いて現場の技術者と教職員を結ぶ交流会や学校でのテスト接続などを経て,オンライン講義が実現した.今後,COVID-19の影響が下火となっても,オンラインの良さを生かし,対面活動とのハイブリッド化が進む可能性がある.このセッションでのGIGA構想という狙いの元,大容量の無線LAN回線接続により,対面に近い一対応一の対話型にも道を作った試みを紹介する.ご協力いただいた「海のみらい静岡県友の会」,静岡市立高校,静岡北高校,清水東高校,名城大学附属高校,埼玉県立熊谷高校の先生方,IODP Exp.378乗船中に協力くださった田中えりか博士(東京大学)にこの場をお借りして感謝申し上げる.