日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-07] 高校生ポスター発表

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.27

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O07-P58] 流星群の自動観測・通知システムの開発
~Arduinoを用いた流星出現情報の配信~

*佐藤 弘一1、*李 弘思1、*磯田 隼佑1、*大野 苺香1 (1.中央大学附属中学校・高等学校)

キーワード:流星電波観測、自動ウェブ配信、Arduino、Python

<はじめに>
 一般的に、流星電波観測は特定の周波数の受信が可能な受信機とアンテナを用いた手法であり、現在世界中で取り組まれている。これは、流星が大気圏を通過した際に起こる電離現象によって、地上から発信されたある周波数帯の電波が反射されるという特性を活かした観測手法(HRO/FRO)である。この手法で観測されたデータは流星観測用のソフトウェアであるHROFFTやMROFFTによって画像ファイルとして出力される。この従来の流星電波観測手法は、受信機などの機器やシステム等を構築しなければならず、コストがかかる。そこで私たちは、誰でも容易に流星群を観測できることを目的とし、「自動観測」および「流星出現情報の速やかな通知システム」の実現を目指してシステム開発に取り組んでいる。これまでの研究により、HRO による流星自動観測システムの構築、流星出現シグナルの検出からデータ出力までの完全な自動化、定量的かつ安定したデータの収集と流星出現情報の取得に成功した。私たちがこれまでに開発したシステムでは、流星観測時に得られた音声データの解析値のみを配信する機能を搭載していた。さらに、音声データから流星出現シグナルを自動で検出して流星の出現を配信することができれば、より一層誰もが使いやすく実用性の高いシステムとなりうる。本研究では「流星出現情報の速やかな通知機能」を新たに搭載させたシステムのバージョンアップを目指した。

<手法>
 本システムは、主に3つのセクション:1)2 素子アンテナと受信機による流星電波観測セクション、2)Arduinoとコンピュータによる解析セクション、3)コンピュータにて作動するPython で作成されたBot による送信セクションで構成される。本研究では、次の3つの実験:1)流星電波観測を行った際に録音した音声データを用いて端末にデータを送信する実験、2)実際に流星電波観測を行いながら同様にデータを送信する実験、3)流星電波観測を行った際に録音した音声データを解析し、流星出現シグナルが検出された場合に端末に通知する実験を行った。

<結果と考察>
 受信機から受け取った音声データから流星出現時に観測される特異的な音声データ(流星出現時に音量の増大が顕著となる495 Hz周辺の周波数を持つ音声データ)のみを抽出するために、ArduinoにおけるFFT(高速フーリエ変換)ライブラリを用いて解析し、テキストデータに変換した。抽出・変換後のデータをDiscordおよびLINEのプラットフォーム上にて作成したBotに共有し、ブロードキャストを行った。
 実験1では、Python によってBot 送信されたデータと端末にて確認できた受信データが一致していたことから、「流星出現情報を速やかに配信するシステム」を構築できたといえる。実験2では、流星観測時の実測によっても同様の送受信データの一致が確認できた。実験3では、流星電波の受信時に観測される音声データを解析し、流星出現シグナルを検出した場合に端末に通知することに成功した。したがって、流星電波観測セクション、解析セクション、送信セクションによる観測から配信までの一連の動作を低コストで簡易な手法を用いて完全に自動化することに成功したといえる。
 本システムは流星電波観測によって得られた音声データを自動で解析し、流星出現シグナルかどうかを判別する。そして、流星出現シグナルが検出されたときに、その情報を各端末に一斉配信することができる。これらの新たな機能によって、各個人の端末(例えばスマートフォンなど)にて流星出現情報を簡易に取得できると期待される。

<結論と今後の展望>
 新たな機能を搭載させた流星の自動観測・通知システムは、従来の流星電波観測手法ではコストがかかり実現が難しかった「各個人の端末に向けた流星出現情報のリアルタイム配信」を可能にした。今後は、流星出現情報のリアルタイム配信のみに留まらず、これまで開発してきた、流星出現シグナルの検出システムおよびデータ蓄積システムも活用して、「流星群予報」を行っていきたい。