日本地球惑星科学連合2021年大会

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[O-07] 高校生ポスター発表

2021年6月6日(日) 13:45 〜 15:15 Ch.27

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

13:45 〜 15:15

[O07-P71] 「地震があれば高台に逃げろ」は本当に正しいのか
ー渋谷区指定避難所のへの主要な避難経路の提案ー

*末岡 桜ウナマリー1 (1.東京都立国際高等学校)

キーワード:地震、避難、自然災害

「地震があれば高台に逃げて」という教えは全国各地で見受けられる。しかし、このことわざは本当に正しいのだろうか?

昼夜人が密集する渋谷駅の周りには「渋谷防災地図」において渋谷区が指定している避難所が多数ある。

本研究では多数存在する渋谷区の避難所から15つの避難場所を選び、それぞれの標高や地盤の強さを調べることで「地震があれば高台に逃げろ」という教えの正当性を検証する。

また、ハチ公像や商業施設109など渋谷が特に密集する地点をいくつか選び、直近の避難所への安全かつ迅速な避難経路を提案する。

まず、「地震があれば高台に逃げて」という言葉を検証する。

日本には大きく分けて低地、台地、丘陵、山地4つの地形があることは知られている。それぞれの地形には特徴があり、想定される自然災害からの被害も異なる。ここでは地震が起きた時に考えられうる各地形のリスクを挙げてみようと思う。

まず山地、台地、丘陵などの標高が高い高台では液状化などのリスクは低いものの、土地の造成方法によっては地震時に土砂崩れなどの崩壊が起きる可能性はある。反対に低地では、地震時の揺れの増幅率も比較的に高くなるため液状化のリスクも高い。先日の川崎市武蔵小杉エリアが浸水したことはまだ記憶に新しい。

このような地形ごとの傾向を見つめてみると、「地震があれば高台に逃げて」という教えは科学的にも正しいといえよう。地盤が液状化しやすい低地から道が液状化する前に液状化しにくく浸水のリスクも少ない高台に逃げるという行動は、津波が来る可能性が低い地域においても十分に身を守るための行為「避難」と考えられる。



では、渋谷区の場合はどうなのだろうか。

「渋谷」という地名に「谷」という漢字が含まれていることからも分かる通り、渋谷区はY字型の高台が渋谷駅を中心とする低地を挟んでいる。(図1参照)

そして、この谷の部分に渋谷駅やセンター街を中心とした商業施設などが集中し人が密集する場所となっている。

では、渋谷においても「地震があれば高台に逃げて」という教えは通用するのだろうか?

まず「渋谷区防災地図」を参照すると、帰宅困難者受け入れ施設は低地であり商業施設が集中している渋谷駅周辺に集中しているのに対し、多くの避難所(一時集合場所、避難場所を含む)は渋谷駅から離れた高地に集中していることが分かる。
表2は「渋谷区防災地図」において渋谷区が指定している避難所から15つを選び、それぞれの標高や地盤の強さをまとめたものである。渋谷区指定の避難所はどれも比較的標高が高く、地盤の強さも概ね強いことが改めて分かる。

本研究の最後に、ハチ公像をはじめとした、渋谷区において人が密集しがちな地点から直近の避難所までの安全な避難経路を考察した。どの方向に行ってもある程度の距離を歩けば避難所にたどり着くことはできるが、一番リスクが高いのは液状化しやすい低地での経路だ。液状化は建物の崩壊にも繋がり、人の命を奪いかねない。そういったリスクを考慮した上で考察した経路を図3にまとめた。



本研究を通して昔から語り継がれてきた多くの教えがそうであるように「地震があれば高台に逃げて」という教えも科学的にも正しいことを検証することができた。若者の街として代表的な地区である渋谷でも、先人たちの教えを守り、より多くの命が救われるような未来を目指したい。