13:45 〜 14:00
[SCG49-01] 日本海沿岸における大地震の震源域と地震発生層の下限
キーワード:地震発生層下限、大地震、日本海沿岸
1. はじめに
プレート境界の巨大地震に加えて、上盤プレート中の地震は大きな被害を繰り返し発生させてきた。上盤プレート内地震の最大規模を推定する上で重要な要素である地震発生層の下限(D90)は、地表からD90までの間においてその領域下での地震の90%が発生していることを示す。本研究ではエアガン記録も用いた三次元構造を推定し、その構造により再決定された震源カタログを用いてD90を推定した。日本海沿岸の沖合で発生した地震に着目してD90と震源破壊域を比較した。
日本海では海洋研究開発機構により、数々のエアガンを用いた地下構造探査が実施されてきている。それらのデータは陸域の観測点でも捉えられているが、1発のエアガン探査の記録ではエアガンの到達時刻を読み取るのは困難である。しかし、エアガンの発振は50-200m沖に繰り返し実施されているので、それらを重合することによって読取が可能となった。本研究では、Matsubara et al. (2019)による三次元地震波速度構造解析に用いたデータに能登半島から新潟にかけてと山形沖のエアガンデータの読み取りを加えて三次元地震波速度構造解析を実施した。
2. データ・手法
2000年10月から2019年12月までに東経120~150°、北緯20~50°で発生した1,918,174個の地震を、エアガン記録も用いた三次元地震波速度構造を用いて再決定した。これらの地震のうち、1,497,623個の地震は速度構造の分解能のある領域に震源が決められた。これらのうち、活断層に起因する地震として、M1.5以上の地震で深さ25km以浅の261,522個の地震を抽出した。ある点から±0.1°(約10km)の1辺が約20kmの矩形内における地震の数が11以上ある場合についてD90を算出した。領域の平均的なD90を推定する場合には、やや広い±0.20°(約20km)の1辺が約40kmの矩形内における地震の数から算出した。
3. 結果
日本海沿岸沖合の地震として、2005年福岡県西方沖の地震、2007年能登半島沖地震、2007年中越沖地震、2019年山形県沖の地震について、それぞれの本震前の地震活動から推定したD90と震源破壊域を比較した。1次元構造の震源と比較すると、表層の低速度構造が求められている中越沖地震や山形沖の地震の領域では3次元構造を用いた震源は浅くなるように再決定された。一方で、浅部構造の分解能がない福岡県西方沖や能登半島地震の領域では、3次元構造の震源はやや深くなる傾向があった。中越沖地震の破壊開始は深さ9kmであったが、地震時すべり域は深さ15km程度までであり(Aoi et al., 2008)、深さ20km以深まで達するD90よりもかなり浅い。2019年山形県沖の地震についても破壊領域は深さ13km程度までであり(久保・他, 2020)、14km程度であるD90とほぼ同等であった。一方、能登半島地震では、震源は深さ11km程度であり、断層面は深さ12km程度と推定されている(Hiramatsu et al, 2008)。一次元構造による震源分布から推定したD90は11kmであったが三次元構造による震源分布から推定したD90は12kmであった。三次元構造により断層面より下部のD90が求められたことが分かる。2005年福岡県西方沖の地震では破壊開始点の深さは9kmであり、地震時すべりが大きな領域はそれよりも浅い領域であった(Nishimura et al., 2006)。本震前は地震活動が少なかったため片幅0.2°の領域の地震から推定したD90では13kmより少し浅い程度であった。よって、D90は地震時すべり域より下に位置することが分かる。
4. 結論
三次元構造により再決定した震源分布から推定することにより、既往の大地震の地震時破壊域より下部に位置するD90が得られた。一次元構造での震源から推定したD90は一部で震源断層内に位置する場合もあるため、三次元構造による震源の深さが重要であることが示唆される。
プレート境界の巨大地震に加えて、上盤プレート中の地震は大きな被害を繰り返し発生させてきた。上盤プレート内地震の最大規模を推定する上で重要な要素である地震発生層の下限(D90)は、地表からD90までの間においてその領域下での地震の90%が発生していることを示す。本研究ではエアガン記録も用いた三次元構造を推定し、その構造により再決定された震源カタログを用いてD90を推定した。日本海沿岸の沖合で発生した地震に着目してD90と震源破壊域を比較した。
日本海では海洋研究開発機構により、数々のエアガンを用いた地下構造探査が実施されてきている。それらのデータは陸域の観測点でも捉えられているが、1発のエアガン探査の記録ではエアガンの到達時刻を読み取るのは困難である。しかし、エアガンの発振は50-200m沖に繰り返し実施されているので、それらを重合することによって読取が可能となった。本研究では、Matsubara et al. (2019)による三次元地震波速度構造解析に用いたデータに能登半島から新潟にかけてと山形沖のエアガンデータの読み取りを加えて三次元地震波速度構造解析を実施した。
2. データ・手法
2000年10月から2019年12月までに東経120~150°、北緯20~50°で発生した1,918,174個の地震を、エアガン記録も用いた三次元地震波速度構造を用いて再決定した。これらの地震のうち、1,497,623個の地震は速度構造の分解能のある領域に震源が決められた。これらのうち、活断層に起因する地震として、M1.5以上の地震で深さ25km以浅の261,522個の地震を抽出した。ある点から±0.1°(約10km)の1辺が約20kmの矩形内における地震の数が11以上ある場合についてD90を算出した。領域の平均的なD90を推定する場合には、やや広い±0.20°(約20km)の1辺が約40kmの矩形内における地震の数から算出した。
3. 結果
日本海沿岸沖合の地震として、2005年福岡県西方沖の地震、2007年能登半島沖地震、2007年中越沖地震、2019年山形県沖の地震について、それぞれの本震前の地震活動から推定したD90と震源破壊域を比較した。1次元構造の震源と比較すると、表層の低速度構造が求められている中越沖地震や山形沖の地震の領域では3次元構造を用いた震源は浅くなるように再決定された。一方で、浅部構造の分解能がない福岡県西方沖や能登半島地震の領域では、3次元構造の震源はやや深くなる傾向があった。中越沖地震の破壊開始は深さ9kmであったが、地震時すべり域は深さ15km程度までであり(Aoi et al., 2008)、深さ20km以深まで達するD90よりもかなり浅い。2019年山形県沖の地震についても破壊領域は深さ13km程度までであり(久保・他, 2020)、14km程度であるD90とほぼ同等であった。一方、能登半島地震では、震源は深さ11km程度であり、断層面は深さ12km程度と推定されている(Hiramatsu et al, 2008)。一次元構造による震源分布から推定したD90は11kmであったが三次元構造による震源分布から推定したD90は12kmであった。三次元構造により断層面より下部のD90が求められたことが分かる。2005年福岡県西方沖の地震では破壊開始点の深さは9kmであり、地震時すべりが大きな領域はそれよりも浅い領域であった(Nishimura et al., 2006)。本震前は地震活動が少なかったため片幅0.2°の領域の地震から推定したD90では13kmより少し浅い程度であった。よって、D90は地震時すべり域より下に位置することが分かる。
4. 結論
三次元構造により再決定した震源分布から推定することにより、既往の大地震の地震時破壊域より下部に位置するD90が得られた。一次元構造での震源から推定したD90は一部で震源断層内に位置する場合もあるため、三次元構造による震源の深さが重要であることが示唆される。