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[SEM14-01] 広帯域MT法3次元比抵抗解析による雌阿寒岳のマグマ供給系
キーワード:マグネトテルリク法、雌阿寒岳、比抵抗、マグマ供給系
北海道東部の活火山のひとつである雌阿寒岳の北東麓では,2016年から2017年にかけて顕著な地盤膨張が観測された(国土地理院, 2018).我々は,この地盤膨張領域の地下構造に注目して,2018-2019年にBBMT観測を展開し,過去に阿寒湖畔で行われたAMT/BBMT(茂木・他,2011)データも用いて比抵抗構造解析を行ってきた(井上・他, 2020; SGEPSS).これまでの解析結果によると,地盤膨張のソースとして提案されているシル状圧力源(北海道大学,2019)付近には顕著な比抵抗異常は見られなかった一方で,雌阿寒岳直下約0.5 km BSLを上端とする柱状の明瞭な低比抵抗異常C1(約1-10 Ωm)が現れていた.しかし,雌阿寒岳山頂域に観測点がなかったことから,C1に対する制約は十分とは言えなかった.ポンマチネシリ火口やナカマチネシリ火口との構造的つながりも明らかでない.また,ここまでのモデリングでは,C1は雌阿寒岳西麓における異常位相を再現するために,西方深部に延長している可能性が示唆されていたが,既存の観測点だけではこのC1の形状を制約するには不十分であった.そこで本研究では,雌阿寒岳山頂域3点と西麓3点に新規に観測点を置いた.西麓の観測には東京大学地震研のADU07とADU07e(Metronix社製)を使用し,電場2成分および磁場3成分のデータを取得した.山頂域の3点では,東京工業大学から借用したElog-dual(NTシステムデザイン社製)で電場2成分のみを計測し,磁場については,同時計測した西麓観測点のデータを使用した.応答関数の計算にはBIRRP(Chave and Thomson, 2004)を使用し,地熱技術開発株式会社提供の山形県大蔵村(約700 km離れた点)のデータを用いてリモートリファレンス処理(Gamble et al., 1997)を施した.
新規に展開した観測点のうち,雌阿寒岳西麓3地点のZyx成分で約1000 s以上の帯域に異常位相が確認できた.また,新設した西麓観測点のインダクションベクトルは約5 s以上の帯域で北東〜東側を向いていた.これは雌阿寒岳北麓から東麓の観測点ではインダクションベクトルが概ね南西側を向く傾向にあることと対照的であり,雌阿寒岳の北側に位置するフップシ岳の地下にもC1とは別の低比抵抗域があることを示唆している.
次に,井上・他(2020; SGEPSS)で報告した3次元比抵抗構造を初期モデルとしてModEM(Egbert and Kelbert, 2012; Kelbert et al., 2014)による3Dインバージョンを行い,新規観測点の追加によって構造がどのように修正されるかを予察的に検討した.インバージョンの入力は,既存の観測点39点と新規の観測点6点におけるインピーダンス4成分とティッパー2成分を入力データである.
その結果, RMSミスフィットはエラーフロア5 %に対して約2.8と井上・他(2020; SGEPSS)のインバージョン解析でのRMSミスフィットとほぼ同じ値に収束した.比抵抗構造も大きく変わらずに新規観測点6点のレスポンスも概ね説明できていた.今回のデータの追加により,雌阿寒岳直下の低比抵抗体C1は約30 km以上の深部まで伸びている可能性がより高くなった.我々は,このC1が雌阿寒岳のマグマ供給系・火道系を反映している可能性が高いと考えており,メルト分率推定に基づいてC1の実態について考察を深めたい.
謝辞:本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の支援を受けました.
新規に展開した観測点のうち,雌阿寒岳西麓3地点のZyx成分で約1000 s以上の帯域に異常位相が確認できた.また,新設した西麓観測点のインダクションベクトルは約5 s以上の帯域で北東〜東側を向いていた.これは雌阿寒岳北麓から東麓の観測点ではインダクションベクトルが概ね南西側を向く傾向にあることと対照的であり,雌阿寒岳の北側に位置するフップシ岳の地下にもC1とは別の低比抵抗域があることを示唆している.
次に,井上・他(2020; SGEPSS)で報告した3次元比抵抗構造を初期モデルとしてModEM(Egbert and Kelbert, 2012; Kelbert et al., 2014)による3Dインバージョンを行い,新規観測点の追加によって構造がどのように修正されるかを予察的に検討した.インバージョンの入力は,既存の観測点39点と新規の観測点6点におけるインピーダンス4成分とティッパー2成分を入力データである.
その結果, RMSミスフィットはエラーフロア5 %に対して約2.8と井上・他(2020; SGEPSS)のインバージョン解析でのRMSミスフィットとほぼ同じ値に収束した.比抵抗構造も大きく変わらずに新規観測点6点のレスポンスも概ね説明できていた.今回のデータの追加により,雌阿寒岳直下の低比抵抗体C1は約30 km以上の深部まで伸びている可能性がより高くなった.我々は,このC1が雌阿寒岳のマグマ供給系・火道系を反映している可能性が高いと考えており,メルト分率推定に基づいてC1の実態について考察を深めたい.
謝辞:本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」の支援を受けました.