日本地球惑星科学連合2021年大会

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[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS08] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2021年6月4日(金) 13:45 〜 15:00 Ch.20 (Zoom会場20)

コンビーナ:金木 俊也(京都大学防災研究所)、大谷 真紀子(東京大学地震研究所)、岡崎 啓史(海洋研究開発機構)、吉田 圭佑(東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)、座長:吉田 圭佑(東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)、大谷 真紀子(東京大学地震研究所)

14:45 〜 15:00

[SSS08-22] 2011年東北沖地震後から福島-茨城県境周辺で活発化した地震活動に見られる内陸の繰り返し地震

*池田 里奈1、吉田 圭佑1、高橋 諒2、松澤 暢1、長谷川 昭1 (1.東北大学、2.気象庁)


キーワード:繰り返し地震、内陸断層

2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震以降、福島-茨城県境周辺においては非常に活発な地震活動が続いている。特に、茨城県北部においては2011年3月19日と2016年12月28日にM6程度の地震が発生しており、2つの地震が同一の断層の同じ場所を繰り返し破壊した可能性が指摘されている(Fukushima et al., 2018; Uchide, 2017, JpGU)。内陸断層で地震がこのような短期間で繰り返し発生する事例は極めて珍しく、この事例を調べることは内陸地震の発生サイクルや応力蓄積・解放過程を理解する上で極めて重要であるといえる。仮にこの地震活動中の小中地震の中にも繰り返し地震が存在していた場合、それらは地震サイクル内で進行する非地震性滑りの手がかりになる (Nadeau & Johnson, 1998)。そこで、本研究ではこの福島-茨城県境周辺の地震活動中の小中地震に含まれる繰り返し地震の検出を行なうことにした。多くの先行研究では繰り返し地震の検出のために,波形の相互相関を用いているが、その方法では近傍で起こった地震群を繰り返し地震と見誤る可能性がある。本研究では、精密な震源再決定位置に基づき繰り返し地震の存在を調べることにした。

 2003年から2018年10月31日までに福島-茨城県境周辺で発生した MJMA>1の地震45988個を対象に、Double-Difference法 (Waldhauser & Ellsworth, 2002)を用いた震源の再決定を行った。得られた震源分布は複雑な微細断層構造を示した。ただし茨城県北部地域では地震活動が西へ傾斜する一枚の面構造に集中しており、M6地震はこの断層上で発生したと考えられる。

 全地震ペアの震源間距離を地震の断層サイズと比較することにより繰り返し地震の検出を行なった。具体的には、(1) 地震間距離 < 平均断層半径、(2) マグニチュードの差が0.5以下となる地震ペアを繰り返し地震ペアとみなした。この際,断層サイズは、応力降下量20MPa (池田・他,2020, JpGU)の円形断層を仮定して求めた。その結果、181個の地震ペアが見つかり、その多くが茨城県北部に分布していた。これらの地震ペアの地震波形は近傍の観測点で見ても非常によく似ている。また得られた 181個の各地震ペアについて各観測点で得られた S-P時刻差を調べると、その標準偏差が0±0.01秒以内に収まるペアが112個あった。このことから、これらの地震ペアは断層上の同一の場所を破壊した繰り返し地震である可能性が高いと思われる。

 Nadeau & Johnson (1998)による経験式に基づき、繰り返し地震間の周囲の非地震性すべり量を推定したところ、約7~15cmの値が得られた。Fukushima et al. (2018)は,2011年に発生したM6地震による余効滑り量を推定し、その大きさが数十 cm程度と非常に大きかったことを示しているが、その量は今回小繰り返し地震から推定された非地震性滑りの量と同程度である。本研究で検出された繰り返し地震は、M6地震による余効滑りの影響により発生した可能性が考えられる。