17:15 〜 18:30
[SSS10-P08] 根尾谷断層の断層ジョグ中のキンクバンドに記録された断層運動
キーワード:キンクバンド、断層ジョグ、根尾谷断層
岐阜県北西部に分布する根尾谷断層は基本的には左横ずれ変位を示すものの、本巣市根尾水鳥では2本の断層に囲まれた断層ジョグであるために1891年濃尾地震の際に縦ずれ変位が生じている。この断層ジョグにおいて基盤岩である美濃帯付加コンプレックスの泥質メランジュが地表に露出しており、その中にキンクバンドが発達している。このキンクバンドは地下における断層ジョグの挙動を記録している可能性がある。そこで、キングバンドの産状、姿勢、せん断センス、鉱物脈との関係、微小変形構造に基づいて、根尾谷断層における断層ジョグの地下で生じている現象を明らかにすることが本研究の目的である。
調査地域では、面構造がよく発達する泥質メランジュが分布しており、その面構造の姿勢はEW90に集中する。計測したキンクバンドは31本であり、そのうち左ずれが29本、右ずれが2本である。キンクバンドはそのせん断センスによって特徴が異なっている。キンクバンドの褶曲軸面であるキンク面は左横ずれではN30W80W、右ずれではNS80Wが卓越し、褶曲軸は鉛直方向に卓越する。左ずれのキンクバンドでは面構造が折れ曲がる角度が小さく、キンクバンドに沿った鉱物脈が認められないのに対して、右ずれキンクバンドでは面構造が折れ曲がる角度が大きく、キンクバンドに沿った鉱物脈が認められる。この鉱物脈は右ずれによって形成される雁行配列を示している。
左ずれキンクバンドの微小変形構造として、面構造と開口割れ目の折れ曲がり、面構造に沿った石英脈の変位が認められる。これはキンク褶曲に伴う折れ曲がりとそれに伴う層面すべりであると考えられる。右ずれキンクバンドに伴われる鉱物脈には、岩石薄片観察及び粉末X線回折分析より、石英・カリ長石・緑泥石・アンケライトが含まれている。
左ずれキンクバンドと右ずれキンクバンドは、両者が共役関係であると仮定すると形成時の主圧縮応力軸σ1が共役断層の鈍角側に位置すること、かつ両者の特徴が異なることから、共役関係ではないと考えられる。左ずれキンクバンドは褶曲軸面が根尾谷断層とほぼ平行であること、開口割れ目が面構造とともにキンク褶曲を生じることから、地表付近での変形、すなわち最近の根尾谷断層の活動に関連して生じたと考えられる。一方で、右ずれキンクバンドは高温条件下で形成される鉱物脈を含んでいることから、過去により深部で形成されたと考えられる。
左ずれキンクバンドの面構造が褶曲軸面で変位を生じていないと仮定すると、左ずれキンクバンドの形成に伴う変位量を見積もることができる。露頭内で面構造に沿った長さ5.91 mの範囲で左ずれキンクバンドによる総変位量が0.35 mであり、このような変形が根尾水鳥の断層ジョグ全体で生じていると仮定すると、総変位量は26 mと見積もることができる。これは、本巣市金原における累積変位量約2 km(村松ほか, 2002)に比べると小さいものの、断層ジョグでは断層面に加えてキンクバンドも断層変位を受け持っていると理解できる。
引用文献:村松ほか(2002)濃尾地震と根尾谷断層帯.
調査地域では、面構造がよく発達する泥質メランジュが分布しており、その面構造の姿勢はEW90に集中する。計測したキンクバンドは31本であり、そのうち左ずれが29本、右ずれが2本である。キンクバンドはそのせん断センスによって特徴が異なっている。キンクバンドの褶曲軸面であるキンク面は左横ずれではN30W80W、右ずれではNS80Wが卓越し、褶曲軸は鉛直方向に卓越する。左ずれのキンクバンドでは面構造が折れ曲がる角度が小さく、キンクバンドに沿った鉱物脈が認められないのに対して、右ずれキンクバンドでは面構造が折れ曲がる角度が大きく、キンクバンドに沿った鉱物脈が認められる。この鉱物脈は右ずれによって形成される雁行配列を示している。
左ずれキンクバンドの微小変形構造として、面構造と開口割れ目の折れ曲がり、面構造に沿った石英脈の変位が認められる。これはキンク褶曲に伴う折れ曲がりとそれに伴う層面すべりであると考えられる。右ずれキンクバンドに伴われる鉱物脈には、岩石薄片観察及び粉末X線回折分析より、石英・カリ長石・緑泥石・アンケライトが含まれている。
左ずれキンクバンドと右ずれキンクバンドは、両者が共役関係であると仮定すると形成時の主圧縮応力軸σ1が共役断層の鈍角側に位置すること、かつ両者の特徴が異なることから、共役関係ではないと考えられる。左ずれキンクバンドは褶曲軸面が根尾谷断層とほぼ平行であること、開口割れ目が面構造とともにキンク褶曲を生じることから、地表付近での変形、すなわち最近の根尾谷断層の活動に関連して生じたと考えられる。一方で、右ずれキンクバンドは高温条件下で形成される鉱物脈を含んでいることから、過去により深部で形成されたと考えられる。
左ずれキンクバンドの面構造が褶曲軸面で変位を生じていないと仮定すると、左ずれキンクバンドの形成に伴う変位量を見積もることができる。露頭内で面構造に沿った長さ5.91 mの範囲で左ずれキンクバンドによる総変位量が0.35 mであり、このような変形が根尾水鳥の断層ジョグ全体で生じていると仮定すると、総変位量は26 mと見積もることができる。これは、本巣市金原における累積変位量約2 km(村松ほか, 2002)に比べると小さいものの、断層ジョグでは断層面に加えてキンクバンドも断層変位を受け持っていると理解できる。
引用文献:村松ほか(2002)濃尾地震と根尾谷断層帯.