日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT34] 空中からの地球計測とモニタリング

2021年6月3日(木) 15:30 〜 17:00 Ch.23 (Zoom会場23)

コンビーナ:楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、小山 崇夫(東京大学地震研究所)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、座長:楠本 成寿(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、小山 崇夫(東京大学地震研究所)、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)

16:15 〜 16:30

[STT34-04] 重力異常や重力偏差(gzz)のパワースペクトルから原因層の平均深度を与える回帰曲線の自動推定手法

*楠本 成寿1、東中 基倫2 (1.京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設、2.株式会社 地球科学総合研究所)

キーワード:重力異常、パワースペクトル、自動深度推定

本研究では,重力異常や重力偏差(gzz)のパワースペクトルから原因層の平均深度を与える直線や曲線を自動的に推定する手法を提案する。

重力異常の原因層の平均深度の推定では,重力異常のパワースペクトルから直線近似が出来そうな周波数帯を選定し,その区間のデータを説明する回帰直線を求める。この周波数帯の範囲は解析者により選定されるため,この解析は解析者の熟練度に依存している。重力偏差(gzz)の原因層の平均深度の推定も同様である。回帰直線を求めようとする周波数帯の範囲が何らかの指標に従って自動的に決めることが出来れば,回帰直線の推定,ひいては推定された重力異常や重力偏差の原因となる層の数や平均深度の客観性が高まる。あるいは周波数帯ではなく,回帰直線が何らかの指標によって直接,自動的にデータから推定されれば,平均深度の推定に複数の手順を踏む必要がないため,その手法は重力異常や重力偏差データの定量解析に有用である。

本研究では,この指標として,任意のデータから回帰直線を推定した時に,推定された回帰直線とデータの当てはまり具合を評価する際に用いられる決定係数R2に注目する。R2は通常1以下の値をとり,R2が1に近いと推定された回帰直線がデータをよく説明できていることを示す。

解析では,まず全周波数帯のデータを初期データとして設定し,最深層に対応する回帰直線を推定する。高い波数側から順次データを減らしながら回帰直線の推定を行い,回帰直線を推定するたびに決定係数R2を計算する。R2が最も高い回帰直線を最適回帰直線とする。その後,同じ手法を残りのデータ(高周波数側)に適用し,その次に深い深度を与える回帰直線を推定する。これを繰り返すことで,原因層の数とその平均深さ与える回帰直線が自動的に決定される。

重力異常の径平均パワースペクトルは比較的なだらかな曲線を描くことが多い。このような曲線から回帰直線を探すために,本研究ではL2ノルム最小化(最小二乗法)ではなく,回帰直線推定にロバストなL1ノルム最小化を採用した。本来,決定係数は最小二乗法によって推定された回帰直線とデータの当てはまり具合を評価する指標である。したがってL1ノルム最小化によって推定された回帰直線の評価法としては最適ではなく,一つの指標である。しかしながら,Fig. 1に示されるように,この指標で評価することにより,リージョナル,ローカル,ノイズ周波数帯の平均深度に対応した回帰直線を抽出できた。