日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT36] 合成開口レーダーとその応用

2021年6月5日(土) 09:00 〜 10:30 Ch.22 (Zoom会場22)

コンビーナ:木下 陽平(筑波大学)、阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、小林 祥子(玉川大学)、姫松 裕志(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、座長:阿部 隆博(三重大学大学院生物資源学研究科)、木下 陽平(筑波大学)

09:45 〜 10:00

[STT36-04] Sentinel-1強度画像を用いた土砂移動による道路閉塞の検出

*伊藤 奎政1、木下 陽平1 (1.筑波大学)


キーワード:SAR、土砂移動、道路閉塞、Sentinel-1、強度画像

地震や豪雨などの自然災害時には、土砂移動による道路閉塞が発生する恐れがある。ひとたび道路閉塞が発生すると、集落の孤立や避難、救助の遅れを招き、人的・経済的にも深刻な被害をもたらすため、発災後には被害地域の迅速な把握が必要となる。衛星SARは時間帯や天候に関わらず地表面広域を観測可能であり、被害地域の迅速な把握にも有用である。本研究ではSentinel-1の強度画像を用いた土砂移動及び道路閉塞箇所の検出手法を提案する。

本研究では、災害発生前の複数のSAR強度画像を時間方向に平均化した画像と災害発生直後の強度画像の後方散乱強度差を用いて、土砂移動に伴う局所的な強度変化を検出した。過去に発生した複数の土砂移動箇所を解析したところ、土砂移動後に大きな強度増加が生じていたため、この解析結果を基に強度増加の閾値を4dBと設定し、また傾斜角などの地形情報も含めた数種類の閾値からなる決定木手法を用いて土砂移動の検出手法を構築した。元の解像度における検出結果にはスペックルなどの微小なノイズが無視できず、また土砂移動の詳細な形状や大きさは行政や自治体での実用にはあまり重要ではないため、提案手法では1辺が数百m程度の解像度にダウンスケールした場合についても土砂移動検出を行った。道路閉塞箇所は、検出された土砂移動の情報と先行研究で提案された斜面崩壊による土砂流下経路の長さを推定する統計的モデル式を用いて推定した。提案手法の検出精度は、2018年北海道胆振東部地震と2017年九州北部豪雨の2つの事例で評価した。
2018年北海道胆振東部地震の事例では、比較的大きな規模の土砂移動を中心とした一部の被害箇所を検出することに成功し、1辺400mの解像度における土砂移動の検出精度は誤検出率2.7%、未検出率85.2%であった。同様に、提案手法によって半数近くの道路閉塞箇が検出された。一方で、2017年九州北部豪雨の事例では土砂移動の誤検出が多く確認された。これは土砂移動以外の箇所でも強い降雨による地表および散乱特性の急激な変化が生じたためであると考えられる。道路閉塞の検出においても、土砂移動の検出結果に起因した多くの誤検出が確認された。しかし一方で、提案手法を用いることで土砂移動が集中している地域を面的に検出できる可能性も確認でき、豪雨事例でも被害地域が集中する領域を定性的に把握できることが示唆された。