日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC28] 活動的⽕⼭

2021年6月5日(土) 10:45 〜 11:30 Ch.25 (Zoom会場25)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:角皆 潤(名古屋大学大学院環境学研究科)、大場 武(東海大学理学部化学科)

11:15 〜 11:30

[SVC28-27] 無人航空機搭載用火山プルーム自動採取装置SelPSの開発および改良

*角皆 潤1、新宮原 諒1、伊藤 昌稚1、森下 雄平1、中川 書子1、吉川 慎2、宇津木 充2、横尾 亮彦2 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:火山ガス、プルーム、二酸化炭素、ドローン、自動プルーム採取装置

火山ガスの化学組成や同位体組成の絶対値とその時間変化は、火山性流体の挙動や起源を推定する上で、また火山活動の現状や今後の推移を把握する上で有用な指標となる。しかし、火山ガスは噴気孔に直接アクセスしないと採取出来ないため、火山ガスの化学組成や同位体組成が報告される火山はごく一部に限られ、また本格的な噴火活動が始まると、火山ガスデータの取得は絶望的であった。そこで、火山ガスの代わりに噴煙 (プルーム;火山ガスが大気中に放出され、希釈・冷却されることで形成される) の化学組成や同位体組成を測定し、ここから大気成分の寄与を補正することで、火山ガスの化学組成や同位体組成を推定する努力が、過去20年間に渡って行われて来た。現在では、濃度であれば、多くの火山の多くの化学成分について火山ガス組成が推定出来るようになった。しかし同位体組成となると、より火山ガス濃度の高い (=大気による希釈の小さい) 噴煙試料が必要となるため、報告出来る火山は限られていた。
 そこで我々は、ドローンに代表されるUAS (Unoccupied Aerial Systems) を用いて噴煙試料を採取することを企画し、これに搭載する自律型の自動サンプラー (SelPS) を製作した。そして2019年8月に阿蘇中岳において実際にドローンに搭載して噴煙試料の採取に成功したが (Shingubara et al., JVGR, in press)、その際火口縁で同時にマニュアル操作で採取した噴煙試料と比較して、最大火山ガス濃度は50%増程度にとどまり、大気との間の濃度差が小さいCO2では、火山ガス中の13C/12C比の推定が出来なかった。そこで2020年はSelPSにいくつかの改良を施し、阿蘇中岳で再度ドローンに搭載して噴煙試料の採取試験を行い、より高濃度の噴煙試料の採取に成功したので、結果を報告する。

開発した自動噴煙サンプラーおよび2020年度の改良について
 SelPSの本体部分は、内容量2.6 Lのプラスチック製容器の中に格納されており、総重量は1.2 kgである。フライト中はInlet tube経由でドローンの下方約3 mの外気を小型ポンプを用いて連続的に吸引しており、そのSO2濃度を連続的にモニタリングしている。SO2濃度が上昇し、外気が高濃度の噴煙中に入ったと判定されると、流路を切り替え、吸引した外気を容器外に接続したテドラーバッグ中に自動的に導入する。最初のテドラーバッグが一杯になったら自動的に次のテドラーバッグに導入し、一回のフライトで複数個の噴煙試料を採取する。2020年度はこれに以下の改良を施した。①フライト中にSelPSがモニタリングしているSO2濃度をドローンの操縦者に向けてリアルタイムに送信する機能を追加し、より高濃度の噴煙が採取出来るようにドローンの位置を微調整出来るようにした、②噴煙採取のトリガーとなるSO2濃度設定値を2019年度の5 ppmから20 ppmに引き上げた、③電子回路を中心に強度を上げて、安定性を向上させた。
本研究は、文部科学省次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト (課題B「先端的な火山観測技術の開発」) の助成を受けて実現しました。また現地観測では井上寛之様 (京大)、阿蘇火山防災会議協議会の皆様に大変お世話になりました。