日本地球惑星科学連合2021年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] 火山・火成活動および長期予測

2021年6月3日(木) 17:15 〜 18:30 Ch.13

コンビーナ:長谷川 健(茨城大学理学部地球環境科学コース)、及川 輝樹(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、三浦 大助(大阪府立大学 大学院理学系研究科 物理科学専攻)、下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

17:15 〜 18:30

[SVC30-P01] 豪州・アンダラ溶岩流と溶岩チューブ洞窟から得られる溶岩降伏値について

*本多 力1 (1.火山洞窟学会)

キーワード:溶岩チューブ、降伏値、溶岩流、アンダラ火山

[はじめに]
アンダラ洞窟は19万年まえのアンダラ火山の噴火により形成された溶岩流(図1)の最大長さ160km,平均傾斜角度0.3°の緩い斜面に形成された,最大高さ20m,最大幅32mの空洞を擁する巨大溶岩チューブ洞窟システムである[1,2]. アンダラ火山の溶岩噴出温度は1170~1220℃,珪酸重量分率は48.9wt%と言われている[1,2] . 文献で公表されているAtkinsonら[1,2,3]のデータを用いて溶岩降伏値を二つの方法[4]:溶岩流停止条件と溶岩チューブ形成限界条件からの推定を試みた.

[アンダラ火山溶岩流の厚さから得られる降伏値]
表1に溶岩流領域ごとの溶岩厚さ,傾斜度と得られた降伏値を示す. 表1の ①~③は文献[1]によるもので.④は②と③の値から得られた降伏値.である.降伏値は溶岩流の停止条件[4]:fB= H(ρgsinα)から求めた.高い見かけの降伏値fB=4.3~6.4x103 Paは溶岩膨張や溶岩重畳を示しており真の溶岩降伏値は低い方の降伏値fB=1.5~2.1x103 Paであると考えられる.

[アンダラ洞窟の空洞高さから得られる降伏値]
表2にアンダラ洞窟システムの代表的な部分の空洞高さ,幅,傾斜角度を示す[3]. 表2の ①~⑤は文献[3]によるもので.⑥は③と⑤の値から得られた降伏値である. これらの洞窟の中で最も距離が長くチューブ状構造を明らかに示している洞窟はBayliss caveとBarkers caveである[1]. 他の洞窟は溶岩で流路がふさがれたり床が埋没したりして流路チャンネルのごく一部を構成している断片的な洞窟である. この空洞高さと傾斜角度から溶岩がチューブから抜け出す限界条件[4]fB= H(ρgsinα)/4を用いて,降伏値を求めたものを表2の⑥に示す. Tayler cave,Bayliss cave,Barkers caveでは高い降伏値を示し,他の低い空洞高さを示す洞窟については、洞窟床に溶岩流が何層か堆積して空洞高さが低くなったと考えられ低い見かけの降伏値fB=272~834 Paを示している. Tayler cave,Bayliss cave,Barkers caveから得られる高い溶岩降伏値fB=1.4~3.4x103 Paが真の降伏値に近いものと考えられる. また溶岩流停止条件から得られる溶岩降伏値fB=1.5~2.1x103 Paとも整合的である.

[おわりに]
溶岩降伏値fB=1.4~3.4x103 Paは珪酸重量分率48.9wt%の玄武岩として妥当な値である. 低い見かけの降伏値を示す他の断片的な洞窟については床が埋没して空洞高さが低い値を示していると考えられ,詳細な洞窟内部の構造の観察によって降伏値が妥当な値かどうかの判断が必要である.

参考文献:
[1]Anne Atkinson(2010):Undara Volcano, North Queensland, Australia and its Lava Field – Lava Caves, Depressions and The Wall – a Possible Lunar Analogue ,Proceedings 14th International Symposium on Vulcanospeleology, 2010. www.vulcanospeleology.org/sym14/papers/Atkinson.pdf
[2]Anne and Vernon Atkinson(1995):Undara Volcano and its Lava tubes, A geological Wonder of Australia in Undara Volcanic National Park,North Queensland
[3]Graeme P.Melville(1994):Lava tubes and channels of the Earth, Venus, Moon and Mars, Master of Science (Hons.) thesis, Department of Physics, University of Wollongong, 1994. http://ro.uow.edu.au/theses/2859
[4]本多力,勝間田隆吉,伊藤裕,畑中将(2017):B3-06溶岩チューブ洞窟と溶岩樹型による富士山・須山胎内溶岩流の検討,2017年日本火山学会秋季大会講演予稿集https://www.jstage.jst.go.jp/article/vsj/2017/0/2017_96/_pdf/-char/ja