13:45 〜 14:15
[ACC28-01] 合成開口レーダー干渉法による東シベリア・レナーアルダン河川間におけるサーモカルスト沈降分布
★招待講演
キーワード:永久凍土、サーモカルスト、東シベリア、合成開口レーダー干渉法、ALOS-2
サーモカルスト(thermokarst)は,含氷率の高い永久凍土帯で引き起こされる不可逆的な地形変化現象であり、東シベリアやアラスカで広く観測されている。東シベリアのレナ川、アルダン川に囲まれた地域 (レナ川中流域)では,サーモカルストに伴う地形変化がこの30年で顕著にみられ (Fedorov et al., 2014; Crate et al., 2017),地盤沈下によるインフラ破壊や,水収支・生態系の変化など,近隣住民の生活に大きな影響を与えている.この地域におけるサーモカルストによる地形変化の観測は,メルニコフ永久凍土研究所の研究グループによって1990年代からユケチにおいて連続的に行われてきたが (Fedorov et al., 2014)、地域全体におけるサーモカルスト沈降量の包括的な観測手段がなく、永久凍土荒廃の評価が立ち遅れていた。凍土融解における沈降速度と空間分布は、その地域における凍土荒廃評価を行うための重要な指標となりうるため、その可視化が求められている。
合成開口レーダー (synthetic aperture radar: SAR)は、地上に観測機器を必要とせずに地表面の状態と衛星―地表間の距離に関する情報を得ることができる技術である。2時期のSARデータの位相データを用いた干渉SAR解析は、地表面の変動を高精度に計測できる手法であり、地殻変動や氷河流動などの地表面変位を伴う地球物理学現象の解明に利用されている。干渉SARによる永久凍土環境変化の監視への適用例もこの10年程度で増加しており、凍土動態を理解する新たなツールの1つになりつつある。本研究では、サーモカルストに伴う地表面の経年的な沈降量を調べるために、宇宙航空研究開発機構が2014年に打ち上げた「だいち2号(ALOS-2)」のストリップマップモード (解像度10 m)のSARデータを用いた。解析期間は2014年10月から2021年10月までの約7年である。干渉SARで得られた干渉画像に対して、Small BAseline Subset (SBAS)による干渉SAR時系列解析(Berardino et al., 2002; Schmidt and Burgmann, 2003; Biggs et al., 2007; Yanagiya and Furuya, 2020)を適用し、解析期間における地表面の累積沈降量を計算した。
我々は、レナ川中流域の主要な居住地であるマイヤ、チュラプチャ、アムガ、チュンギュリュ周辺を対象に解析を行った。このうち、マイヤとチュラプチャでは干渉SARと現地調査による先行研究があり、いずれも森林を開墾してできた牧草地や耕作放棄地において明瞭なサーモカルスト沈降が確認されている (Abe et al., 2020; Iijima et al., 2021)。干渉SAR時系列解析の結果、マイヤ、チュラプチャ、アムガでは、農地や耕作放棄地において10-15 cm程度の沈降量が検出された。同様の傾向がチュンギュリュでも確認されたが、その沈降量は数 cm程度であり、他の地域に比べて小さかった。明瞭な沈降が検出された場所はいずれもポリゴン地形が確認された。このポリゴンの大きさと空間的集中度は、地中にあるアイスウェッジの分布と対応するため (Saito et al., 2018)、居住地ごとの農地や耕作放棄地におけるポリゴンの空間的集中度と沈降速度の関係についても解析し、発表する予定である。
また、東シベリアでは近年森林火災が多発しており、その火災跡地における急激な永久凍土融解が危惧されている (e.g., Talucci et al., 2022)。本研究の解析範囲・期間でも、複数の森林火災が発生しており、その跡地で明瞭な地盤沈下が検出されているので、そちらについても本発表で紹介する。
合成開口レーダー (synthetic aperture radar: SAR)は、地上に観測機器を必要とせずに地表面の状態と衛星―地表間の距離に関する情報を得ることができる技術である。2時期のSARデータの位相データを用いた干渉SAR解析は、地表面の変動を高精度に計測できる手法であり、地殻変動や氷河流動などの地表面変位を伴う地球物理学現象の解明に利用されている。干渉SARによる永久凍土環境変化の監視への適用例もこの10年程度で増加しており、凍土動態を理解する新たなツールの1つになりつつある。本研究では、サーモカルストに伴う地表面の経年的な沈降量を調べるために、宇宙航空研究開発機構が2014年に打ち上げた「だいち2号(ALOS-2)」のストリップマップモード (解像度10 m)のSARデータを用いた。解析期間は2014年10月から2021年10月までの約7年である。干渉SARで得られた干渉画像に対して、Small BAseline Subset (SBAS)による干渉SAR時系列解析(Berardino et al., 2002; Schmidt and Burgmann, 2003; Biggs et al., 2007; Yanagiya and Furuya, 2020)を適用し、解析期間における地表面の累積沈降量を計算した。
我々は、レナ川中流域の主要な居住地であるマイヤ、チュラプチャ、アムガ、チュンギュリュ周辺を対象に解析を行った。このうち、マイヤとチュラプチャでは干渉SARと現地調査による先行研究があり、いずれも森林を開墾してできた牧草地や耕作放棄地において明瞭なサーモカルスト沈降が確認されている (Abe et al., 2020; Iijima et al., 2021)。干渉SAR時系列解析の結果、マイヤ、チュラプチャ、アムガでは、農地や耕作放棄地において10-15 cm程度の沈降量が検出された。同様の傾向がチュンギュリュでも確認されたが、その沈降量は数 cm程度であり、他の地域に比べて小さかった。明瞭な沈降が検出された場所はいずれもポリゴン地形が確認された。このポリゴンの大きさと空間的集中度は、地中にあるアイスウェッジの分布と対応するため (Saito et al., 2018)、居住地ごとの農地や耕作放棄地におけるポリゴンの空間的集中度と沈降速度の関係についても解析し、発表する予定である。
また、東シベリアでは近年森林火災が多発しており、その火災跡地における急激な永久凍土融解が危惧されている (e.g., Talucci et al., 2022)。本研究の解析範囲・期間でも、複数の森林火災が発生しており、その跡地で明瞭な地盤沈下が検出されているので、そちらについても本発表で紹介する。