日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG34] Climate Variability and Predictability on Subseasonal to Multidecadal Timescales

2022年5月25日(水) 09:00 〜 10:30 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:森岡 優志(海洋研究開発機構)、コンビーナ:Murakami Hiroyuki(Geophysical Fluid Dynamics Laboratory/University Corporation for Atmospheric Research)、那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、コンビーナ:Zhang Liping(NOAA GFDL Princeton)、Chairperson:Hiroyuki Murakami(Geophysical Fluid Dynamics Laboratory/University Corporation for Atmospheric Research)、那須野 智江(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)


10:00 〜 10:15

[ACG34-05] 2020/21年冬季の東アジアにおける気温偏差の反転を引き起こしたテレコネクションパターン

*倉持 将也1植田 宏昭2 (1.筑波大学理工情報生命学術院、2.筑波大学生命環境系)


キーワード:テレコネクション、熱源応答、冬季東アジアモンスーン、気候変動、季節内変動

2020/21年冬季(12月~2月)の東アジアの気温は、前半と後半の間で低温から高温へと急激に転じた。本研究では、この要因について熱帯の対流活動の変調に着目したテレコネクションの観点から調査する。平年より気温が低かった冬前半は、チベット高原南東部から中国南部にかけての高気圧性循環偏差と日本北部の低気圧性循環偏差から成る南西–北東対の双極子パターンが対流圏上層に発現していた。このパターンは、海洋大陸で活発化した積雲対流活動により励起される定常ロスビー波の伝播によって形成される。一方、冬後半になると、活発化した熱帯の対流活動の中心は東方のフィリピン海上へシフトし、対応するように高気圧性循環偏差も日本の南へと位置を変えた。この結果、日本を挟んだ南北対パターンが形成され、高温偏差となった。月平均データに基づいた合成解析から、対流圏上層のチベット高原南東部の高気圧偏差は南シナ海上の強化された対流活動と密接に関わっていること、また、日本の南に定在する高気圧偏差の半数の場合でフィリピン海での対流活発を伴うことが示された。線形傾圧モデルを用いた熱源応答実験の結果、南シナ海のみとフィリピン海のみの非断熱加熱に対する応答は、それぞれ2020/21年冬季の前半と後半に対応する循環偏差を概ね再現した。さらに渦度収支解析から、気候値に見られるチベット高原南東部での対流圏上層の強い風の収束が、渦菅の伸縮効果により循環偏差の位置の固定に寄与していることが示唆された。