日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気海洋・環境科学複合領域・一般

[A-CG45] 陸域〜沿岸域における⽔・⼟砂動態

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (14) (Ch.14)

コンビーナ:山崎 大(東京大学生産技術研究所)、コンビーナ:木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)、浅野 友子(東京大学)、コンビーナ:有働 恵子(東北大学災害科学国際研究所)、座長:山崎 大(東京大学生産技術研究所)、有働 恵子(東北大学災害科学国際研究所)、浅野 友子(東京大学)、木田 新一郎(九州大学・応用力学研究所)

11:00 〜 13:00

[ACG45-P05] 吉野川における砂利採取およびダム建設の土砂動態への影響評価

*中原 大輔1有働 恵子1 (1.東北大学 災害科学国際研究所)


キーワード:砂利採取、ダム建設、土砂動態、河床変動、流砂量、吉野川

河道からの砂利採取やダム建設は,河川の土砂動態に影響を与え,海岸侵食や河床低下といった問題を引き起こすことが知られている.これらの問題に対処するためには,砂利採取やダムによる土砂動態の変化の把握や,包括的な土砂管理が重要である.戦後の高度経済成長期の日本では,河道からの砂利採取やダムの建設が活発に実施された.吉野川では,1960年代から1970年代を中心に砂利採取が大規模に実施された.また,1975年には池田ダムが完成した.本研究では,1次元河床変動解析モデルを用いて,1965年~1999年の35年間の吉野川の河床変動や流砂量などを推定し,砂利採取およびダム建設が吉野川の土砂動態に与える影響を評価した.

対象区間は,吉野川の池田ダムから河口までの77.8 kmである.上流端の流量は,1965年~1974年は池田(無堤)の日平均流量,1975年~1999年は池田ダムの時間放流量を用いた.初期河床位は1965年の実測河床位を用いた.河床材料の粒度分布は,1997年の実測値を用いた.堰の位置に対応する河床位を,それぞれの堰の標高に変換し,その位置の河床位は低下しないものと設定した.本研究では,砂利採取やダム建設が未実施の場合と,実際の状況のように,砂利採取やダム建設が実施された場合の2つの解析を実施した.砂利採取による河床低下量は,砂利採取量を河道面積で除して求め,年始に反映させた.砂利採取量は,1974年以前は許可量の6倍,1975年以降は許可量と同等とした.また,ダム上流の平衡流砂量の30%がダムの下流へ供給されるとした.

1965年の実測河床位を基準にした1974年の河床位の変動は,砂利採取が実施された場合では,平均で0.8 m低下したと算出された.砂利採取が大規模に実施された時期を中心に,河床位の低下が進行した.一方で,砂利採取量が減少し,池田ダムが完成した1975年以降は,河床位の変動は安定した.1975年以降,砂利採取やダム建設が実施された場合の河床の平均粒径が,未実施の場合と比較して大きくなった.ダム完成後の河床位の安定傾向は,ダムの供給土砂の減少と河床の粗粒化が関連していると推察される.

1965年~1974年の砂利採取の有無による流砂量の変化が,柿原堰から河口までの限られた範囲を中心に確認された.また,砂利採取の実施により,海域への流砂量が1割程度減少した.1975年~1999年の流砂量は,砂利採取やダム建設の実施により,ダムの下流から河口までの解析区間の全体で半減した.池田ダムの供給土砂の減少が,河口にまで影響を及ぼすことが示唆された.