日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW27] 都市域の水環境と地質

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (10) (Ch.10)

コンビーナ:林 武司(秋田大学教育文化学部)、コンビーナ:宮越 昭暢(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、座長:林 武司(秋田大学教育文化学部)、宮越 昭暢(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

11:00 〜 13:00

[AHW27-P06] 埼玉県における地中熱源ヒートポンプシステム実証試験
―2021年夏の冷房運転結果―

*濱元 栄起1白石 英孝1、相澤 和哉2、山﨑 身枝2 (1.埼玉県環境科学国際センター、2.埼玉県環境部エネルギー環境課)

キーワード:地下水熱、地中熱源ヒートポンプ、関東平野

地中熱エネルギーは、地中や地下水の熱を起源とする再生可能エネルギーのひとつであり、それを利用した地中熱利用システムは省エネルギー効果などに優れ国内外で普及し始めている。特に地中熱源ヒートポンプ(以下、地中熱HPと記す)は冷暖房や給湯などの用途で大型の施設や住宅など幅広く利用されている。
この地中熱HPの将来的な普及のためには、地中熱HPと空気熱源ヒートポンプ(以下、空気熱HPと記す)の運転性能や地下環境への影響を実証試験によって示し、その成果を情報発信することが重要である。ただし、これらのシステムは設置場所の気象条件や熱負荷によって運転効率が変わり、地中熱HPについては、地下環境条件によっても運転効率が変わることから、条件の異なる複数地点で実証試験を行うことが望ましい。さらに住宅分野における地中熱ヒートポンプの普及余地は大きいことから、住宅の部屋を想定した規模の実証試験を地域内で実施することが望まれてきた。
埼玉県では、2018年度に県内5地点(埼玉県加須市、羽生市、宮代町、春日部市、飯能市)の小規模な建物内に地中熱HPと空気熱HPの両方を設置した。5地点のうちの4地点(羽生市、宮代町、春日部市、飯能市)は、大気常時監視のための測定局(大気監視局)のコンテナであり、1地点は環境科学国際センターのエコロッジ棟(加須市)である。特に、大気監視局に設置したシステムは、2019年度から冷房運転(夏季)と暖房運転(冬季)による運転性能の比較を行うことを主目的に設置した。そしてこのデータ取得は2021年10月に終了した。最終の運転試験は2021年8月の冷房運転試験であり、本発表ではこの結果について示す。従前の2019年夏と2020年夏の運転試験では、地中熱HPと空気熱HPを10日間又は15日間で交互に運転させたが、2021年夏は地中熱HPに対象を絞り、比較的長期間(1カ月間)の運転で性能比較を行った。
試験の結果、3地点の大気監視局(羽生市、春日部市、飯能市)で良好なデータ(出入口温度や循環液流量)を得ることができた。一方で、1地点の大気監視局(宮代町)では、2次側循環系の温度センサーに経年劣化が原因と思われる異常が発生した。良好なデータが得られた3地点における2次側の運転期間中の平均SCOP(速報値)は、羽生:5.5、春日部:5.4、飯能:4.8であった。これらの結果は2019年度及び2020年度の冷房運転試験の結果とも整合的である。以上のように、結果の再現性を確認できたことや比較的長期間の運転性能を確認できた意義は大きい。

謝辞:本実証試験においては、地中熱利用促進協会の笹田政克理事長にご助言を頂き、システムの設置には、(株)PEC、(株)アグリクラスター、(株)ホームエネシス、(株)コロナにお力添えを、データ取得や解析には応用地質(株)にご協力を頂いた。また、本実証試験においては、科研費19K12436、19K12364、19K12365によって得られた知見等も踏まえ実施した。ここに記して謝意を表します。