日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS17] 海洋物理学一般

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (8) (Ch.08)

コンビーナ:土井 威志(JAMSTEC)、コンビーナ:岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、座長:土井 威志(JAMSTEC)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)

11:00 〜 13:00

[AOS17-P05] 黄海・東シナ海の海面水温変動が九州南部における梅雨期の降水量に与える影響

*白澤 元気1加古 真一郎2中村 啓彦3 (1.鹿児島大学大学院 理工学研究科、2.鹿児島大学 理工学域工学系、3.鹿児島大学 水産学部)


キーワード:大気海洋相互作用、黄海・東シナ海、降水量、海面水温

黄海・東シナ海(Yellow and East China Seas:YECS)の海面水温(Sea Surface Temperature:SST)変動が,梅雨期の九州各地における降水量の経年変動に対して与える影響については,未解明な部分が多い.本研究は,現場観測値を用いて,九州各地における長期間の降水量トレンドの特性を明らかにし,これとYECSのSST変動の関係を,人工衛星データ(J–OFURO3)を用いて調べることを目的とする.解析期間は1988年から2018年の梅雨期(6,7月)である.
本研究では,九州全23の地上気象観測所の現場観測値を用いて,各観測点における梅雨期の旬積算降水量(10日ごとの積算降水量として定義)と旬ごとのトレンドを調べた.その結果,6月下旬の九州南部5地点(油津,鹿児島, 種子島, 枕崎,都城)にのみ,有意な正の増加トレンド(有意水準90%)があることがわかった.この5地点の6月下旬積算降水量を年毎に平均した時系列から,有意な降水量の増加トレンドは,2010年以降の降水量の急激な増加に起因していることが明らかとなった.次に,この降水量の増加とYECSの SST変動の関係を,SSTのコンポジット平均値(降水量が平均値±標準偏差外で分類)を求めることで調べた.その結果,降水量が増加した年は,黄海と黒潮以南でSSTが例年よりも高く,東シナ海陸棚域ではSSTが低下する傾向にあることがわかった(降水量が減少する際は,この逆).これらの海域で平均したSSTと6月下旬積算降水量の経年変動を比較したところ,黄海のSSTとの相関が最も高かった(黄海:0.616,陸棚域:- 0.350,黒潮流域:0.204).また,降水量と同様に2010年以降,黄海のSSTが上昇していることもわかった.