日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS22] 沿岸域の海洋循環と物質循環

2022年5月25日(水) 15:30 〜 17:00 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:高橋 大介(東海大学)、コンビーナ:古市 尚基(水産研究・教育機構 水産技術研究所)、山口 一岩(香川大学)、コンビーナ:森本 昭彦(愛媛大学)、座長:高橋 大介(東海大学)、古市 尚基(水産研究・教育機構 水産技術研究所)、山口 一岩(香川大学)、森本 昭彦(愛媛大学)

15:30 〜 15:45

[AOS22-07] 東シナ海における亜表層溶存酸素濃度減少域の水平分布

*小埜 恒夫1 (1.国立研究開発法人 水産研究・教育機構)

キーワード:東シナ海、溶存酸素、経年変動

昨年の本大会において、夏季の対馬海峡周辺海域の水深30mから海底(約100m)までという非常に浅い水深帯で、-0.70 mmol/kg/yという非常に速い速度の溶存酸素濃度減少傾向が見られることを報告した。追加解析の結果、同様のトレンドが済州島周辺海域まで連続して見られる事から、対馬海峡における溶存酸素の減少トレンドは日本海固有水の貧酸素化の影響が伝播したものではなく、東シナ海のどこかの海域(例えば渤海等)で生じた貧酸素のシグナルが水平輸送されたものであることが示唆された。
この酸素減少トレンドの発生源を突き止めるために、WOD2018に収録されている東シナ海全域の1950年から現在までの溶存酸素データを抽出したうえで、さらに東シナ海を29の小区画に分割し、各小区画内での夏季(6〜8月)および冬季(12月〜2月)の溶存酸素濃度の経年変動を、深度別に解析した。この結果、夏季に表層が長江希釈水に覆われる海域でのみ、その直下である水深30mから75mの水深帯で夏季の溶存酸素濃度に直線的な減少トレンドが検出されることがわかった。該当海域における表層-水深50m間の水温勾配、塩分勾配は、1960年代から90年代にかけて特に増加トレンドは見られず、溶存酸素の鉛直勾配だけが経年的に増加していることから、これらの海域で観測されている亜表層溶存酸素濃度の減少要因は、成層構造の強化による表層からの溶存酸素供給量の低下ではなく、亜表層における生物学的酸素消費量の増加が主要因となっていると考えられる。