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[BBG01-P05] 高度好塩性アーキア脂質コアのC25-C20アーキオール異性体ならびに類縁体の探査
キーワード:好塩性アーキア、エーテル脂質、アーキオール、高塩分環境
アーキアは全て,特徴的なイソプレノイド脂質コアであるアーキオール(C20イソプレノイドジエーテル)(1)を持つ。好塩性アーキアはC25イソプレノイドを一つ持つC25-C20 ジエーテル(2)を生産する[1]。Dawsonらは幾つかの超好塩性アーキアでは,1と2 およびその不飽和体が生産されることを報告した[2]。一方,Teixidorらは岩塩中には2の位置異性体である3の存在を報告している[3]。これら化合物(2と3)は高塩濃度環境の指標として利用できることが期待される。投稿者はDawsonの提唱する構造の不飽和体化合物の化学合成から彼らの提唱する化学構造ではない二重結合の位置が異なる異性体の存在を示唆する結果を報告した[4]。また2と3の化学合成からTeixidorらの報告している岩塩中のジエーテルが2と3の混合物であることを強く示唆する結果を得た[5]。
さて,2と3はエーテル結合の位置異性体であるが,3はこれまで培養微生物体からの検出例はなく常に2のみが存在するとされてきた[6]。そこで現在理研BRCにて得られる,高塩濃度環境や岩塩などから単離された菌株を分与いただき,その培養と分析から,本当に3は微生物にはないのか,また生産菌による不飽和化合物の存在とその構造の詳細解析が可能か調査を行なっており[7],その経過を報告する。
コア脂質の調製に関し,ヒドロキシアーキオールの調製で用いられているアルカリ性加水分解[8]を用いることにより,様々な菌株においてわずかに不飽和アーキオールが存在することと,Halorhabdus utahensis (JCM 11049)には3およびその不飽和化合物がコア脂質として存在することが明らかとなった。ここには大きな問題があり,多くの場合脂質コアは酸性による加水分解による処理を経ているがそこで不飽和ジエーテル化合物を加水分解してしまっている可能性がある。そこで二重結合を一つ持つモデル4を調製し加水分解によって検討した。4は酸性条件で直ちに加水分解しモノエーテルを生じた。これはアルカリ性加水分解の重要性を示している。また2と3の共存は,岩塩の結果[3](おそらく均等な程度存在)から考えると3の異性体がもっと存在しても良さそうであるが3を主成分とするのは現状1種のみである。ただ数種において微量に3が存在するようである。3をはっきり含むような菌株の探査を引き続き行うとともに,3(および2)の分解速度や異性化の可能性も化学合成した標準物質で検討する予定である。
[1] De Rosa et al., J. Gen Microbiol (1982) 265: 343. [2] Dawson et al., Org Geochem (1982) 48: 1. [3] Teixidor et al., Geochem Cosmochim Acta (1993) 57: 4479.[4] Yamauchi, Res Org Geochem (2019) 35: 1. [5] Yamauchi, JpGU meeting 2019 (2019), BBG02-P03. [6] Morita et al., Biosci.Biotechnol. Biochem. (1998) 62: 596. [7] Yamauchi, JpGU meeting 2020 (2020), BBC02-P05. [8] Sprott et al., J Biol Chem (1990) 265: 13735.
さて,2と3はエーテル結合の位置異性体であるが,3はこれまで培養微生物体からの検出例はなく常に2のみが存在するとされてきた[6]。そこで現在理研BRCにて得られる,高塩濃度環境や岩塩などから単離された菌株を分与いただき,その培養と分析から,本当に3は微生物にはないのか,また生産菌による不飽和化合物の存在とその構造の詳細解析が可能か調査を行なっており[7],その経過を報告する。
コア脂質の調製に関し,ヒドロキシアーキオールの調製で用いられているアルカリ性加水分解[8]を用いることにより,様々な菌株においてわずかに不飽和アーキオールが存在することと,Halorhabdus utahensis (JCM 11049)には3およびその不飽和化合物がコア脂質として存在することが明らかとなった。ここには大きな問題があり,多くの場合脂質コアは酸性による加水分解による処理を経ているがそこで不飽和ジエーテル化合物を加水分解してしまっている可能性がある。そこで二重結合を一つ持つモデル4を調製し加水分解によって検討した。4は酸性条件で直ちに加水分解しモノエーテルを生じた。これはアルカリ性加水分解の重要性を示している。また2と3の共存は,岩塩の結果[3](おそらく均等な程度存在)から考えると3の異性体がもっと存在しても良さそうであるが3を主成分とするのは現状1種のみである。ただ数種において微量に3が存在するようである。3をはっきり含むような菌株の探査を引き続き行うとともに,3(および2)の分解速度や異性化の可能性も化学合成した標準物質で検討する予定である。
[1] De Rosa et al., J. Gen Microbiol (1982) 265: 343. [2] Dawson et al., Org Geochem (1982) 48: 1. [3] Teixidor et al., Geochem Cosmochim Acta (1993) 57: 4479.[4] Yamauchi, Res Org Geochem (2019) 35: 1. [5] Yamauchi, JpGU meeting 2019 (2019), BBG02-P03. [6] Morita et al., Biosci.Biotechnol. Biochem. (1998) 62: 596. [7] Yamauchi, JpGU meeting 2020 (2020), BBC02-P05. [8] Sprott et al., J Biol Chem (1990) 265: 13735.