日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-CG 地球生命科学複合領域・一般

[B-CG05] 地球史解読:冥王代から現代まで

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (30) (Ch.30)

コンビーナ:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、コンビーナ:加藤 泰浩(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、コンビーナ:中村 謙太郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、座長:小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)

11:00 〜 13:00

[BCG05-P07] 西オーストラリア,ピルバラ海岸グリーンストーン帯における32億年前,デキソンアイランド層の詳細観察による海底熱水系堆積場の解明

*井口 祐輔1清川 昌一1 (1.九州大学)

西オーストラリア,ピルバラ海岸グリーンストーン帯中のクリーバービル地域にあるデキソンアイランドには,32-31億年前の熱水噴出場を記録するデキソンアイランド層が分布する(Kiyokawa et al., 2006, Kiyokawa et al., 2012).デキソンアイランド層は全層厚が400m以上あり,下位からコマチアイト-流紋岩(KR)部層(Komatiite-Rhyolite Tuff Member: 層厚<250m),黒色チャート(BC)部層(Black Chert Member: 7~20m),多色チャート(VC)部層(Varicolored Chert Member: 150m)からなる.下位のKR部層はコマチアイトや流紋岩からなるが著しい変質作用を被っており,熱水起源の有機物を含む黒色チャート脈が多く貫入している.BC部層およびVC部層はKR部層に整合的に重なり,当時の熱水活動の盛んな海底直上に堆積した地層になる.デキソンアイランドでは横ずれ断層によりDX AからDX Fの6つのブロックからなり,それぞれに上記の地層が露出している.本研究では熱水活動の中心部で,KR部層からBC部層の連続層序が残るDX Cに焦点を当て,1層ごとの偏光顕微鏡観察を行い,当時の海底熱水系海底直上での堆積相の解明を行った.試料はBC部層最下部から厚さ8m中に見られる56枚の地層から地層ごとに合計74枚の薄片を作成して観察を行った.
ここでは,暗緑色珪質頁岩,均質塊状黒色チャート,層状黒色チャート,白色チャート(元バライト層),火山灰層,バイオマット層の6つの岩相に区分した.この区分を基に柱状図を作成した.Unit1(層厚150cm):最も下部で厚さ20~50cmの暗緑色珪質頁岩と均質黒色チャートが2回繰り返す.Unit2(層厚150cm):厚さ25cmの白色層状火山灰層から始まり,5~40cmの暗緑色珪質頁岩と層状黒色チャート層 が互層する.Unit3(層厚250cm):厚さ30cmの白色チャートから始まり,5~30cmの暗緑色珪質頁岩,均質黒色チャート,層状黒色チャートが互層する.Unit4(層厚210cm):厚さ15~30cmの水酸化鉄粒子からなるストロマトライト状組織を持つバイオマット層から始まり,5~30cmの層状黒色チャート,暗緑色珪質頁岩の互層が重なる.
以上よりUnit1とUnit3では均質黒色チャートが堆積しており,細かな有機物粒子に富む.ラミナはなく,均質であり丸い有機物を伴うシリカ物質の沈殿物である.Unit2,Unit4ではバイオマットや有機物を含む細かな平行ラミナが残されており,特にUnit1の均質黒色チャートとUnit4の層状黒色チャートでは炭素物質が濃集した組織 が見られる.Unit3の境界に見られる白色チャートは地層に直交する方向に結晶が見られ,元々の熱水作用に関連したバライト層が珪化した可能性がある.また,全てのユニットに見られる暗緑色珪質頁岩は均質で,緑泥石を主とする均質な粘土層であり,砕屑粒子もほとんど含まない.
このように,デキソンアイランド層に見られる海底熱水場では,陸源性物質が含まれず,定常的に粘土物質が堆積している.また,熱水活動に伴う有機物を含むシリカ堆積物や表層に繁茂した微生物やバライトなどの熱水堆積物が互層することが明らかになった.