11:00 〜 13:00
[BCG05-P09] 西オーストラリア・タンビアナ累層(27億年前)のストロマトライトの局所化学分析:太古代後期の表層水におけるリン濃度
★招待講演
キーワード:太古代、ストロマトライト、タンビアナ累層、海水組成、リン、表層環境進化
リンは生命必須元素のうちの一つであり,地質学的な時間スケールで第一次生産を律速している.しかしながら,太古の海洋の無機溶存リン濃度の推定からは,富栄養海洋とリンに欠乏した海洋といった,正反対のシナリオが提唱されている.
太古代の海洋におけるリン濃度の推定は,主に鉄鉱床におけるP/Fe比,頁岩における全岩リン濃度が用いられている.前者においては,鉄酸化物へのリン酸化学種の吸着を考慮して推定を行うが,吸着係数がSi,Mg,Caなどの海洋の他の溶存化学種に影響を受けるといった問題点が存在する.後者においては,頁岩におけるリン濃度が海水におけるリン濃度を反映しているという前提に立っているが,そのメカニズムに不確定性が残る.そこで,古海洋のリン濃度を考える上での新たなプロキシとして,炭酸塩岩におけるリン濃度が考えられる.
最近の研究によって,サンゴ骨格のアラゴナイト中にリン酸化学種が結晶格子欠陥として存在することが示された.一般に,周辺水との化学的平衡を保って無機的に沈殿した炭酸塩岩は,ある一定の分配係数を保って微量元素を取り込むことが知られている.炭酸塩岩は二次的な変成や続成作用を受けやすい岩石ではあるが,初生的な堆積構造を残している炭酸塩岩は堆積当時の化学組成を残している可能性が高い.
西オーストラリア,ピルバラ地塊,フォーテスキュー層群,タンビアナ累層には,世界的に最も良好な保存状態のストロマトライトが産出する.しかしながら,その主要産出層であるMeentheena部層における堆積場がいまだ決定しておらず,湖沼,一時湖といった解釈に加え,干潟,浅海といった解釈が存在する.
本研究では,レッドモント地域で採取されたタンビアナ累層のストロマトライトを厚片試料にし,分析を行った.観察によって,ストロマトライトは低マグネシウム方解石,珪質部,ヘマタイトやパイライトなどで構成されていた.砕屑性粒子として緑泥石,アルカリ長石,スフェーン,アパタイト,火山ガラスなどがみられた.全岩分析ではこれら小さな砕屑物,スパライトなどの混入によって,初生的な化学組成を得ることがむつかしくなる.
そこで本研究では,ストロマトライトのミクライト質なラミナ部のみを,学習院大学においてレーザーアブレーション高周波誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICPMS)を用いて局所化学分析を行った.測定元素はAl, Si, P, Ti, Mn, Sr, Zr, Ba, REEである.得られたデータは,砕屑物やリン酸塩等の混入の影響を避けるため,ICPMSのシグナル強度において時系列データの確認を行い,Alが1wt%もののみを考察に用いる.
多くのサンプルで,先行研究の報告通り,PAAS規格化時のREEパターンは平滑であった.しかしながら,Meentheena部層の最下部に当たる試料では,高いY/Ho(最大で42),小さなCeアノマリーがみられた.これらのことから,Meentheena部層最下部は海水から沈殿し,また酸化的であることから,酸素発生型光合成細菌が生息していた可能性を示した.
リン濃度に関しては,Meentheena部層を通して17-73ppm,平均して約30ppm,程度であった.先行研究における,南中国の原生代末期からカンブリア紀の炭酸塩岩のリン濃度と比較をすると,本研究で得られたデータはカンブリア紀のウーイドと同程度であることが示された.以上のことから,本研究では太古代の海洋には顕生代と同程度のリン濃度が存在していた可能性を示した.
太古代の海洋におけるリン濃度の推定は,主に鉄鉱床におけるP/Fe比,頁岩における全岩リン濃度が用いられている.前者においては,鉄酸化物へのリン酸化学種の吸着を考慮して推定を行うが,吸着係数がSi,Mg,Caなどの海洋の他の溶存化学種に影響を受けるといった問題点が存在する.後者においては,頁岩におけるリン濃度が海水におけるリン濃度を反映しているという前提に立っているが,そのメカニズムに不確定性が残る.そこで,古海洋のリン濃度を考える上での新たなプロキシとして,炭酸塩岩におけるリン濃度が考えられる.
最近の研究によって,サンゴ骨格のアラゴナイト中にリン酸化学種が結晶格子欠陥として存在することが示された.一般に,周辺水との化学的平衡を保って無機的に沈殿した炭酸塩岩は,ある一定の分配係数を保って微量元素を取り込むことが知られている.炭酸塩岩は二次的な変成や続成作用を受けやすい岩石ではあるが,初生的な堆積構造を残している炭酸塩岩は堆積当時の化学組成を残している可能性が高い.
西オーストラリア,ピルバラ地塊,フォーテスキュー層群,タンビアナ累層には,世界的に最も良好な保存状態のストロマトライトが産出する.しかしながら,その主要産出層であるMeentheena部層における堆積場がいまだ決定しておらず,湖沼,一時湖といった解釈に加え,干潟,浅海といった解釈が存在する.
本研究では,レッドモント地域で採取されたタンビアナ累層のストロマトライトを厚片試料にし,分析を行った.観察によって,ストロマトライトは低マグネシウム方解石,珪質部,ヘマタイトやパイライトなどで構成されていた.砕屑性粒子として緑泥石,アルカリ長石,スフェーン,アパタイト,火山ガラスなどがみられた.全岩分析ではこれら小さな砕屑物,スパライトなどの混入によって,初生的な化学組成を得ることがむつかしくなる.
そこで本研究では,ストロマトライトのミクライト質なラミナ部のみを,学習院大学においてレーザーアブレーション高周波誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICPMS)を用いて局所化学分析を行った.測定元素はAl, Si, P, Ti, Mn, Sr, Zr, Ba, REEである.得られたデータは,砕屑物やリン酸塩等の混入の影響を避けるため,ICPMSのシグナル強度において時系列データの確認を行い,Alが1wt%もののみを考察に用いる.
多くのサンプルで,先行研究の報告通り,PAAS規格化時のREEパターンは平滑であった.しかしながら,Meentheena部層の最下部に当たる試料では,高いY/Ho(最大で42),小さなCeアノマリーがみられた.これらのことから,Meentheena部層最下部は海水から沈殿し,また酸化的であることから,酸素発生型光合成細菌が生息していた可能性を示した.
リン濃度に関しては,Meentheena部層を通して17-73ppm,平均して約30ppm,程度であった.先行研究における,南中国の原生代末期からカンブリア紀の炭酸塩岩のリン濃度と比較をすると,本研究で得られたデータはカンブリア紀のウーイドと同程度であることが示された.以上のことから,本研究では太古代の海洋には顕生代と同程度のリン濃度が存在していた可能性を示した.