日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-01] 総合的防災教育

2022年5月22日(日) 15:30 〜 17:00 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、コンビーナ:久利 美和(気象庁)、座長:林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、小森 次郎(帝京平成大学)

16:45 〜 17:00

[G01-06] 防疫やダイバーシティを含めた九州大学の防災教育のターニングポイントへ

*杉本 めぐみ1 (1.九州大学 男女共同参画推進室)

キーワード:2016年熊本地震、2017年九州北部豪雨、新型コロナ感染症、ダイバーシティ、防疫、防災教育

九州大学では2016年熊本地震後に学生からの要望を受けて、主に学部1年生向けの基幹教育オープン科目にて「九州の防災―熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」を2017年に開講した。本講は学部を超えた全学教員によるオムニバス講義である。災害に関して様々な専門の教員が研究だけでなく、2016年熊本地震や2017年九州北部豪雨等の九州圏だけでなく、2011年東日本大震災の福島、海外の災害の支援をしている。本校では教員の最先端の研究に触れるだけでなく、地元福岡の2017年九州北部豪雨の仮設住宅や、島原の附属地震火山観測研究センターの近隣住民をはじめ被災地との関わりやネットワークも被災地実習等を通じて経験する。このように文系理系を問わず、様々な学部と九大病院から教員が本講を担当してきた。地震、気象、災害医療、災害歯学、原発防災、仮設住宅の建設と建築専攻の学生ボランティア活動(KASEI)、リスクマネジメント、災害で失われながらも再建等でユネスコの記憶遺産に登録を支援するICOMOSの活動など多様な専門家が担当する講義である。履修生は最後に被災地実習および、学んだことの防災教育を実際に行うことまでが課された。教員の講義内容をまとめた講義と同名の教科書を2018年3月に出版した。
 それぞれの教員の講義を春学期と夏学期を通して総合的に理解することで、災害に対する現在の研究の進捗と九州でこれまでに起きた災害を知ることができる。さらに、九州大学に入学して一人暮らしを始めた学生が身近なリスクについて知り、防災知識を身に着ける目的も兼ねていた。伊都キャンパスはとりわけ、玄海原発から32kmに位置し、原発のリスクに気づかずに入学し、そのまま生活している学生が殆どである。九州大学で学生生活を過ごす中で、これから起こり得る災害に自分はどうそなえるかを一緒に考え、取り組む講義である。自身の防災・減災のための準備やボランティアなど災害への社会的関わり方などを考えることができると考えていた。
 しかし、新型コロナ感染症拡大になり、被災地実習はできず、避難所ではいつも感染症が問題になるにもかかわらず、防疫の面でも教育の機会が不足していることが露呈した。さらに、ダイバーシティの問題についても殆ど触れてこられなかった。新型コロナにより現在のターニングポイントを迎えどのように防災教育を行っていくべきか。他大学とも比べながら、防災教育の現状と今後について検証する。

参考資料:杉本めぐみ編著代表.「九州の防災」.2018年.
https://www.jst.go.jp/ristex/variety/action_report/20180330_01.html