日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-01] 総合的防災教育

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (22) (Ch.22)

コンビーナ:林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、コンビーナ:久利 美和(気象庁)、座長:林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、小森 次郎(帝京平成大学)

11:00 〜 13:00

[G01-P01] 小規模校・園合同の地震防災教室および訓練の実践について

★招待講演

*山田 伸之1、丁子 かおる2 (1.高知大学、2.和歌山大学)

キーワード:地震防災教室、小規模小学校・幼稚園、避難訓練

本報告では,著者らがこれまでに各種園・学校での地震防災教室を中心に行ってきた防災に関する実践活動 のうち,2020年と2021年の津波の日(11月5日)に和歌山市立雑賀崎小学校・幼稚園(併設)で実施した防災教室と避難訓練の取り組みを報告する。さらに実践後のアンケート等の集計結果の報告も行い,今後の課題を抽出する。特に,この報告では,海沿いに立地する園・学校での行事の一つとして位置付けられる防災教室と,市の行政無線から発せられる緊急地震速報を利用した地震時対応訓練と津波避難訓練を一体化した取り組みとして,また,これらを互いに隣接する小規模な幼稚園と小学校(幼児・児童総数50名(2年間平均))の連携接続を意識した防災活動の取り組み事例として,報告する。
防災教室については,主にこれまでにいくつかの幼児教育施設や学校で乳・幼児や児童等を対象にしてきたものを活用し,体感や児童・幼児の相互の関わりあいを交えた各種防災体験ツールを活用し,その中では,ペープサートの劇を見たり,身を守るための姿勢を,歌とダンスを交えて学んだり,揺れや煙・暗やみなどを体験したり,危険物から回避したりする活動をコースのアトラクションとして用意し,それらを1つずつ乗り越えていくように設定した。一連の各種の体験活動などは,子どもの発達過程や発達段階に合わせて設定し,幼児も児童もほぼすべての子どもたちが取り組むことができていた。特に,高学年の児童らは単に体験活動に参加するだけでなく,みずから防災教室を展開する一員として,下級生の児童や幼児たちに見せる・教える活動をしてもらった。それによって,上級生としての自覚を持たせるだけでなく,成功体験から率先して防災活動への取り組みを継続的に取り組んでいけるようになると考えられる。こうした試みは小規模校ゆえに実行できるものともいえる。また一方,各年齢・学年に応じて,教諭らによる「ふり返り活動」も行ってもらい,参加したすべての子どもたちへの活動の印象づけを強くし,家庭でも話題提供のきっかけにすることも行った。
避難訓練については,緊急地震速報が流れるタイミングを子どもたちには具体的に知らせない状態(幼児・児童がばらばらに園・校舎内にいる状況下)で実施し,とっさの時に身を守る動きを確認する機会にもなった。津波を警戒した高台への避難についても,通常の訓練と異なる活動に戸惑う子どもたちの姿も見られ,教諭らにとっても気付きがあり,今後の改善につながるものと考えられる。
また,保護者向けと教諭向けおよび子どもたち向け(小学生のみ)アンケートも実施した。保護者向けのアンケート結果では,ほとんどの家庭で,もしものときのことを話し合った経験があると答え,防災への関心の高さがうかがえた。防災教育の必要性については,大部分の保護者は肯定的であるが,一部の保護者は,負担を感じているようでもあった。単発の行事であるにも関わらず,一連の防災教室と避難訓練のパッケージは,全般的には好評であり,毎年の各回の活動から子どもたちの行動や考え方の変化をみることもでき,子どもたちが成長していく発達段階に合わせた防災教育の継続性も必要であることをあらためて認識させられた。また,実施した日の意味を理解する機会にもなったと考えられる。
今後の防災教育に関する内容を推進するにあたって,保護者の不安も考慮しながら,子どもたちを守るため の取り組み実践を蓄積・継続し,効果検証を含めた新たな方向性についての議論を高め,新たな展開をしたい と考えている。この実践においては,和歌山市立雑賀崎小学校長・園長奥村孝先生をはじめ先生方および和歌山大学教育学部学生にお世話になりました。なお,本研究は,JSPS科研費(基盤研究(C): 19K02615)の一部を活用しました。関係者各位に記して感謝いたします。