日本地球惑星科学連合2022年大会

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[J] ポスター発表

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[G-05] ジオパークで学ぶ日本列島の特徴と地球・自然・人の相互作用(ポスター発表)

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (26) (Ch.26)

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、コンビーナ:佐野 恭平(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、郡山 鈴夏(糸魚川市役所)、コンビーナ:小原 北士(Mine秋吉台ジオパーク推進協議会)、座長:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、佐野 恭平(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)

11:00 〜 13:00

[G05-P02] 十勝岳ジオパークの火山学・地形学的特徴とジオパーク活動の関わり

*中村 有吾1 (1.十勝岳ジオパーク推進協議会)

キーワード:十勝岳ジオパーク、活火山、研究課題、防災

十勝岳ジオパークは本年1月28日に新規認定された日本ジオパークで、北海道のほぼ中央部、美瑛町および上富良野町をエリアとする。エリアの南東部には活火山十勝岳があり、この地域の地形・地質をはじめとする自然環境、文化、産業、観光等は、十勝岳の火山活動と深くかかわっている。本発表では、十勝岳火山およびその形成にかかわった過去約300万年間の火山活動の概要と、火山学的諸問題を提示することで、今後のジオパーク活動とくに研究・教育・防災の側面について議論する。
 十勝岳ジオパークの地史は、大きく次の4ステージに分かれる:(1)基盤地質形成と北海道中央部での火山活動の開始(中新世以前)、(2)あいつぐ大規模火砕流の発生と火砕流堆積物がつくる「波状丘陵」の形成(3~1Ma)、(3)十勝岳連峰の形成(1Ma以降)、(4)活火山十勝岳の形成(1万年前以降)。このうち、ステージごとの問題点を次に列挙する。
(1)十勝岳連峰の基盤となる中新世火山岩や、さらにジオパークエリア西部に分布する神居古潭帯(変成岩、玄武岩等)の詳細な地質調査、岩石学的研究が進めば、北海道の形成から十勝岳連峰ができるまでの歴史を解明できるだろう。
(2)エリア周辺には、280万年前の雨月沢火砕流、200万年前の美瑛火砕流、125万年前の十勝火砕流といった大規模火砕流堆積物が分布する。しかし、近年の調査によると、美瑛火砕流は放射年代の異なる2種類の噴出物が存在するので、この地域の火山活動史は大きく修正される可能性がある。また、火砕流堆積物の形成から波状丘陵の景観にいたる周氷河作用についても研究の進展が期待される。
(3)過去約300万年にわたってこの地域でつづいた火山活動と現在の十勝岳がどのような関係にあるのか、マグマ供給系に連続性があるのか、岩石学的議論を進める必要がある。
(4)十勝岳北西山腹の火口群は火山活動が活発で、現在の防災体制はこの領域での噴火を前提としている。一方、十勝岳南西約2キロにあるヌッカクシ火口周辺でも、完新世に数回の火山活動があったことが近年明らかにされた。ヌッカクシ火口の活動が融雪型泥流を引き起こした場合、山麓の市街地に与える影響は甚大と思われる。十勝岳では1926年およびそれ以前にも火山性泥流が発生している。地域防災計画に直接かかわる問題でもあり、泥流の発生メカニズムの解明も重要である。
 ここに挙げた地史および研究上の問題点はいずれも十勝岳ジオパークのテーマに直接かかわっており、これら問題への取り組みは重要なジオパーク活動である。とくに、火山活動の解明は地域防災に直結しており、ジオパークに関わる地域住民と、研究機関・行政が連携して取り組む必要がある。