日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG24] 原子力と地球惑星科学

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (15) (Ch.15)

コンビーナ:竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)、コンビーナ:長谷川 琢磨(一般財団法人 電力中央研究所 )、笹尾 英嗣(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、座長:竹内 真司(日本大学文理学部地球科学科)

11:00 〜 13:00

[HCG24-P07] 粘土鉱物におけるEu(Ⅲ)の吸着脱離挙動

*向井 広樹1 (1.筑波大学)

キーワード:粘土鉱物、ユーロピウム、誘導結合プラズマ質量分析法、集束イオンビーム/透過型電子顕微鏡法、電子線マイクロアナライザー、高レベル放射性廃棄物地層処分

地層処分事業において、処分対象とされている高レベル放射性廃棄物に含まれる種々の放射性核種は、数千年以上の長時間スケールでは、地下水へ溶出しさらに地表付近の環境へと移行していく可能性が考えられる。ただ長半減期のAm-241(半減期約433年)、Am-243(半減期約7370年)、Np-237(半減期約214万年)といったアクチノイド系列の放射性核種に関する研究は比較的限られている。また環境中で粘土鉱物は優れた吸着能を持つことから特に陽イオンの挙動に対して大きな影響を与えている。例えば地層処分事業においても緩衝材として、粘土鉱物の一種であるモンモリロナイトを主成分とするベントナイトが使用されることになっており、放射性核種の漏洩を遅らせる役割が期待されている。そこで、本研究ではアクチノイド系列放射性核種の環境中での挙動について理解するため、各種の粘土鉱物におけるこれらの元素の吸着・脱離挙動について明らかにすることを目的としている。
試料として、黒雲母、カオリナイト、モンモリロナイト、ハイドロバイオタイトといった各種の粘土鉱物を用意し、Amのアナログと考えられているEuを用いて吸着・脱離実験を行った。吸着実験ではEuの濃度を10-3–10-7 M程度で変化させ、またpHを3–9程度で変化させた。その結果、pHの上昇とともにEu吸着率が増加する傾向が各粘土において見られた。一方脱離実験(pH 5.2)では、黒雲母およびハイドロバイオタイトにおいて特に強くEuが固定されていることが示唆された。さらにEu(10-3 M, pH 5.2)を吸着させた黒雲母およびハイドロバイオタイトの試料についてEPMAによって粒子に吸着されたEuについて元素マッピングを測定した。その結果、黒雲母およびハイドロバイオタイトでは粒子の端の方にEuがよく濃集しており、ハイドロバイオタイトではさらに粒子の層間にもEuが侵入していることが明らかになった。
本研究は、「平成31年度放射性廃棄物共通技術調査等事業(放射性廃棄物に係る重要な基礎的技術に関する研究調査の支援等に関する業務)」の成果の一部である。