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[HCG24-P11] 福島県の常緑針葉樹林における林床セシウム137分布の経年変化
キーワード:東京電力福島第一原子力発電所事故、放射性セシウム、常緑針葉樹林、林床、深度分布
はじめに 東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所事故(以下、1F事故)に由来する137Cs(以下、Cs)は半減期が約30年と長く、今後長期にわたり移行挙動を注視する必要がある。福島県の山地森林における長期観測により、林外へのCs流出率はCs現存量に対して1%に満たず、Csは長期的に森林内に留まるものと考えられる。このため、森林内におけるCs分布状況について、長期にわたる調査研究によりその経年変化と経年変化をもたらすメカニズムを明らかにし、林産物Cs濃度の予測につなげる必要がある。
本研究では、福島県内における林床Cs分布の経年変化に係る予察的な解析結果を報告する。
手法 福島県が2014年から2020年にかけて帰還困難区域を除く県内全域の約70-80地点から毎年取得した常緑針葉樹林における林床リター層、土壌0-5 cm深度および土壌5-10 cm深度のCs濃度データセット[1]を対象にクラスター分析を実施した。同データセットに含まれる採取重量、採取面積およびCs濃度データから各層位のCs現存量を算出し、林床の全Cs量に対する各層位のCs量比(百分率)を求めた。各層位におけるCs量比の組み合わせは林床におけるCs量の深度分布に対応する。クラスター分析は、林床のCs深度分布に対して適用した。同分析により、林床のCs深度分布が類似する調査地をグループ化できる。
結果 クラスター分析の結果、2014-2016年における林床Csの深度分布は3もしくは4グループ、2017-2020年は4もしくは5グループに分類することができた。調査年によりグループ数に差異はあるものの、各年において、Cs量比が林床リター層で高く土壌層で低いグループとともに、林床リター層で低く土壌層で高いグループが認められた。但し、林床リターのCs量比は2014年から2016年において60-80%のグループがあるものの、2017年以降は40%台かそれ以下のグループが大部分を占めた。また、土壌5-10 cm深度のCs量比は2014年から2016年では10%台かそれ以下であり、20-30%台のグループは2017年以降に認められるようになる。クラスター分析により分類された各グループについて、予察的な検討段階では樹種やCs現存量との明瞭な相関性は認められなかった。
林床のCs深度分布は、事故直後から数年にかけて林床リター層に大部分のCsが存在し、その後、林床リター層のCs量比が減少し土壌層のCs量比が増加する経年変化を示す[2]。本研究によるクラスター分析の結果も同様の傾向を示しているが、同一調査年において異なる林床のCs深度分布を示す調査地のグループが混在しており、林床のCs深度分布の進展状況が各調査地で異なることを示している。今後、林床のCs深度分布の進展状況に差異をもたらす要因について、土壌物理性や初期沈着後の降雨状況、沈着様式との関連性を検討する予定である。
[1] 福島県森林計画課, 森林における放射性物質調査結果等について. 福島県ホームページ
[2] Takahashi et al., 2018, J.Environ.Radiact. 192, 172-180.
本研究では、福島県内における林床Cs分布の経年変化に係る予察的な解析結果を報告する。
手法 福島県が2014年から2020年にかけて帰還困難区域を除く県内全域の約70-80地点から毎年取得した常緑針葉樹林における林床リター層、土壌0-5 cm深度および土壌5-10 cm深度のCs濃度データセット[1]を対象にクラスター分析を実施した。同データセットに含まれる採取重量、採取面積およびCs濃度データから各層位のCs現存量を算出し、林床の全Cs量に対する各層位のCs量比(百分率)を求めた。各層位におけるCs量比の組み合わせは林床におけるCs量の深度分布に対応する。クラスター分析は、林床のCs深度分布に対して適用した。同分析により、林床のCs深度分布が類似する調査地をグループ化できる。
結果 クラスター分析の結果、2014-2016年における林床Csの深度分布は3もしくは4グループ、2017-2020年は4もしくは5グループに分類することができた。調査年によりグループ数に差異はあるものの、各年において、Cs量比が林床リター層で高く土壌層で低いグループとともに、林床リター層で低く土壌層で高いグループが認められた。但し、林床リターのCs量比は2014年から2016年において60-80%のグループがあるものの、2017年以降は40%台かそれ以下のグループが大部分を占めた。また、土壌5-10 cm深度のCs量比は2014年から2016年では10%台かそれ以下であり、20-30%台のグループは2017年以降に認められるようになる。クラスター分析により分類された各グループについて、予察的な検討段階では樹種やCs現存量との明瞭な相関性は認められなかった。
林床のCs深度分布は、事故直後から数年にかけて林床リター層に大部分のCsが存在し、その後、林床リター層のCs量比が減少し土壌層のCs量比が増加する経年変化を示す[2]。本研究によるクラスター分析の結果も同様の傾向を示しているが、同一調査年において異なる林床のCs深度分布を示す調査地のグループが混在しており、林床のCs深度分布の進展状況が各調査地で異なることを示している。今後、林床のCs深度分布の進展状況に差異をもたらす要因について、土壌物理性や初期沈着後の降雨状況、沈着様式との関連性を検討する予定である。
[1] 福島県森林計画課, 森林における放射性物質調査結果等について. 福島県ホームページ
[2] Takahashi et al., 2018, J.Environ.Radiact. 192, 172-180.