日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG25] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2022年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、コンビーナ:池田 昌之(東京大学)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、コンビーナ:高柳 栄子(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)

09:50 〜 10:05

[HCG25-04] 断層運動が支配する流域地形発達プロセス:高知県東部安田川周辺を例にχマップからの考察

*宮田 廉太朗1遠藤 徳孝1 (1.金沢大学理工学域)


キーワード:流域地形、分水界、断層

流域地形の発達過程において、分水界移動や河川争奪などのイベントは大きな影響を持つと考えられている 。また、隆起速度や気候変動などの外的要因に応答することで地形が変化し、その過程で分水界移動・河川争奪が起きることが指摘されている。本研究では、地震性地殻変動によって形成された海成段丘が広く分布しており、地質学的・測地学的な隆起速度の研究が多くなされている室戸半島西部の地形形成過程を考察する。室戸半島に位置する活断層である安田断層とその周辺に位置する安田川および名村川を解析対象エリアとした。安田断層は西上がりの逆断層であり断層を挟んで西側に名村川、東側に安田川が位置している。名村川流域は細長く、安田川流域は名村川流域と比較すると相対的に大きな形状をしているのがこのエリアの特徴である。
対象地域に対して10 mメッシュのDEMからχマップを作製した。χパラメータはStream power incision model (SPIM)に基づく積分形の指標で、地形の遷移状態を評価する際に用いられる。多くの先行研究では被積分関数に隆起速度は含められず一様な隆起速度を仮定する。本研究では、平衡状態を暫定的に仮定して、起伏から算出される侵食速度を隆起速度に読み替え、隆起速度の空間的差異を考慮して(被積分関数に含めて)χパラメータを計算した。分水界を挟んだ左右でχパラメータに差があるとき、分水界はχパラメータの値が大きい流域の方向へと移動することを示唆する(Willet et al., 2014)が、得られたχマップから、名村川・安田川流域の間にはχパラメータの差があり、χパラメータが相対的に大きい値を示した名村川の方向へと分水界が移動している事が示唆された。安田断層によって生み出される傾動隆起に地形が応答して分水界が移動していることが考えられ、断層運動が流域スケールでの地形形成プロセスを支配している可能性がある。