11:00 〜 13:00
[HCG25-P06] 紀伊水道海域における音響層序と浅部地質構造
キーワード:紀伊水道、中央構造線活断層系、沿岸域、反射法音波探査、音響層序
産業技術総合研究所地質調査総合センターでは,海陸接合部における地震災害リスクの解明や産業立地評価に資する地質情報の整備を目的として,沿岸域平野部および海域の地質調査研究を推進している.令和2年度からは,紀伊水道沿岸域に分布する中央構造線活断層系および派生断層の実態や,それらの活動と平野形成との関わりなどを明らかにするための調査が開始され,これまで海域における重力探査,反射法音波探査,採泥調査および平野部第四系のボーリング調査などが実施された.本発表では,反射法音波探査により明らかにされた海底下浅部の音響層序と地質構造について,予察的な検討を行う.
紀伊水道は瀬戸内海東部に位置する,東西・南北とも約50 kmの海域である.徳島・和歌山・兵庫(淡路島)に囲まれ,南をフィリピン海に開いている.調査海域の水深は概ね10 mから80 mの範囲である.反射法音波探査は,14トンの小型船から音源のブーマーと受振部のマルチチャンネルストリーマーケーブルを曳航して,合計測線長約780 kmにわたり実施した.
調査海域の海底下反射断面において,Mitchum et al. (1977)による堆積シーケンスの概念に則り,少なくとも3つの音響ユニットが識別される(上位からA, B, Cとする).最下位のユニットCは音響的散乱により特徴づけられる音響基盤である.一般に海岸線付近において,ユニットBの下位に”埋もれた島”のように散点的に分布するが,海底面に露出する部分も認められる.ユニットBは,概ね往復走時100 msec(音速を1500 m/secと仮定して約75 m)以上の層厚で調査海域全域の海底下に分布し,海域中央部や海釜地形など水深およそ60 m以深の一部では海底面に露出する.内部反射面は,互いにほぼ平行であるが連続性が悪いことによって特徴付けられる.ユニットBの下限は一般に不明瞭であるが,海岸線付近では起伏に富むユニットC上面へのオンラップパターンが認められる.ユニットBは,層相と内部反射面の分布をより詳しく検討することにより,さらに複数のユニットに区分できる可能性がある.最上位のユニットAは,調査海域に最大往復走時50 msec程度で広く分布し,一般に陸側から沖合にかけて層厚を減じる.内部反射面は互いに平行で連続性が良いことを特徴とする.ユニットAの下限は,下位のユニットBあるいはCの起伏に富む上面に対してオンラップあるいはダウンラップパターンを示す.ユニットA,B,Cは,近接する陸域の地質体との対比から,それぞれ完新統(沖積層),更新統,および先第四系基盤岩類に相当すると考えられる.またユニットA/B境界は,最終氷期最盛期の浸食面およびそれに連続する整合面を表すと解釈される.
調査海域の北部には,徳島沖から淡路島南岸付近を通り和歌山沖に至る,北東−南西走向の顕著な逆断層群が認められる.これらの一部はユニットAの内部反射面を明らかに変位させており,中央構造線活断層系に属する活断層と考えられる.反射面の年代を検討することにより,活動年代を詳細に制約できることが期待される.
参考文献:Mitchum, R.M.Jr., Vail, P.R. and Thompson, S.Ⅲ (1977), AAPG Memoir 26, 53–62.
紀伊水道は瀬戸内海東部に位置する,東西・南北とも約50 kmの海域である.徳島・和歌山・兵庫(淡路島)に囲まれ,南をフィリピン海に開いている.調査海域の水深は概ね10 mから80 mの範囲である.反射法音波探査は,14トンの小型船から音源のブーマーと受振部のマルチチャンネルストリーマーケーブルを曳航して,合計測線長約780 kmにわたり実施した.
調査海域の海底下反射断面において,Mitchum et al. (1977)による堆積シーケンスの概念に則り,少なくとも3つの音響ユニットが識別される(上位からA, B, Cとする).最下位のユニットCは音響的散乱により特徴づけられる音響基盤である.一般に海岸線付近において,ユニットBの下位に”埋もれた島”のように散点的に分布するが,海底面に露出する部分も認められる.ユニットBは,概ね往復走時100 msec(音速を1500 m/secと仮定して約75 m)以上の層厚で調査海域全域の海底下に分布し,海域中央部や海釜地形など水深およそ60 m以深の一部では海底面に露出する.内部反射面は,互いにほぼ平行であるが連続性が悪いことによって特徴付けられる.ユニットBの下限は一般に不明瞭であるが,海岸線付近では起伏に富むユニットC上面へのオンラップパターンが認められる.ユニットBは,層相と内部反射面の分布をより詳しく検討することにより,さらに複数のユニットに区分できる可能性がある.最上位のユニットAは,調査海域に最大往復走時50 msec程度で広く分布し,一般に陸側から沖合にかけて層厚を減じる.内部反射面は互いに平行で連続性が良いことを特徴とする.ユニットAの下限は,下位のユニットBあるいはCの起伏に富む上面に対してオンラップあるいはダウンラップパターンを示す.ユニットA,B,Cは,近接する陸域の地質体との対比から,それぞれ完新統(沖積層),更新統,および先第四系基盤岩類に相当すると考えられる.またユニットA/B境界は,最終氷期最盛期の浸食面およびそれに連続する整合面を表すと解釈される.
調査海域の北部には,徳島沖から淡路島南岸付近を通り和歌山沖に至る,北東−南西走向の顕著な逆断層群が認められる.これらの一部はユニットAの内部反射面を明らかに変位させており,中央構造線活断層系に属する活断層と考えられる.反射面の年代を検討することにより,活動年代を詳細に制約できることが期待される.
参考文献:Mitchum, R.M.Jr., Vail, P.R. and Thompson, S.Ⅲ (1977), AAPG Memoir 26, 53–62.