日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG29] 圏外環境における閉鎖生態系と生物システムおよびその応用

2022年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:篠原 正典(帝京科学大学)、コンビーナ:加藤 浩(三重大学 地域イノベーション推進機構 先端科学研究支援センター 植物機能ゲノミクス部門)、木村 駿太(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 / 宇宙探査イノベーションハブ(併任))、コンビーナ:オン 碧(筑波大学)、座長:加藤 浩(三重大学 地域イノベーション推進機構 先端科学研究支援センター 植物機能ゲノミクス部門)、オン 碧(筑波大学)、横谷 香織(筑波大学生命環境系)

09:45 〜 10:05

[HCG29-03] 閉鎖環境における心理的適応過程に関する質的研究

★招待講演

*藤井 あかり1、長谷 綾子1 (1.香川大学)

キーワード:閉鎖環境、心理、TEM

物理的及び対人的閉鎖環境下における職務遂行時の心理状態を測定する研究は、宇宙飛行士の訓練施設や生態系実験施設、南極越冬隊を対象としたものが散見される。これら閉鎖環境下におけるということは、自由な行動が制限されることを意味する。先行研究において、閉鎖環境下における実験中は、孤立感や不快感、緊張感が高まることが報告されている(嶋宮,2016)。一方、閉鎖環境下に居る期間よりも、その前後の時期にストレス反応が向上したという報告もある(嶋宮ら,2008)。
 しかし、これら先行研究は全て質問紙調査や生理的指標を用いた量的研究であり、心理的適応の機制やプロセスを詳細に検討する質的な研究は希少である(井上ら,2006)。物理的・対人的な制限下で任務を遂行することは、宇宙飛行士や南極越冬隊に限らない。災害救助やそれを務めるための訓練において、また現在、拡大のさなかにある新型コロナウイルス感染症のような感染症の治療においても同様である。依って、これら閉鎖環境下で働く人のメンタルヘルス維持向上のためにも、心理的適応の過程や機制を詳細に検討することは意義があると考え、本研究を実施した。
 本研究は、物理的・対人的に制限が課せられた閉鎖環境実験の参加者を対象に、閉鎖的な環境下における心理的適応の過程を回顧的に研究し、多次元的にサポートレスな環境で生じたストレスフルな状況場面で、精神的に不均衡な状態から均衡に向かう要因と機制を明らかにすることを目的とする。
 本研究の目的は、サポートレスな環境で生じたストレスフルな状況場面で、精神的に不均衡な状態から均衡に向かう要因と機制を明らかにすることであるが、対象者個々人の情動知覚、認知パターン、対処行動が相互的に影響すると考えられる。また、その在り様は経時的に変化し、プロセス化すると考えられる。そこで、人間の経験をその時間と文化・社会的文脈との関係の中で捉え記述するための方法論的枠組みとして、複線経路・等至点モデル、TEMを使用し、各対象者の適応プロセスから共通項を抽出、記述し、モデル化を試みた。