日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS07] 地すべりおよび関連現象

2022年6月1日(水) 16:00 〜 18:00 オンラインポスターZoom会場 (16) (Ch.16)

コンビーナ:千木良 雅弘(公益財団法人 深田地質研究所)、コンビーナ:王 功輝(京都大学防災研究所)、今泉 文寿(静岡大学農学部)、座長:鄒 青穎(弘前大学農学生命科学部)、松澤 真(公益財団法人 深田地質研究所)

16:00 〜 18:00

[HDS07-P06] 長野県諏訪市有賀地区における住民参加型の土砂災害危険度マップ作成の試み

*松澤 真1、南 智好2、蔭山 星2、斉藤 泰久2 (1.公益財団法人深田地質研究所(前所属:パシフィックコンサルタンツ)、2.パシフィックコンサルタンツ株式会社)

キーワード:土砂災害危険度マップ、住民参加、崩壊危険箇所、土層厚測定、土石流シミュレーション

本発表では、長野県諏訪市有賀地区の住民要望にもとづき作成した土砂災害危険度マップについて報告する。調査地は、諏訪湖南西の扇状地上に位置する地域であり、集落に土石流が流下する恐れがある9渓流を対象に土砂災害危険度マップを作成した。調査地の北西2kmに位置する小田井沢川では、2006年の豪雨で崩壊起因の土石流が発生し、死者7名の人的被害が発生している。また、対象渓流の栃久保沢では2006年、程沢では1983年の豪雨により崩壊が多数発生しており、対象地域は土石流の危険性が高い地域と言える。調査地の山地は鮮新世から更新世初期の塩嶺累層を基盤とし、表層には火山灰土が分布することが多い。
調査は、1.崩壊危険斜面の抽出、2.代表斜面での詳細調査、3.土砂災害危険度マップの作成、4.住民説明会の実施の順で行った。1と2は、松澤ほか(2021)に基づく手法で実施し、3には地元住民も参加した。
調査の結果、崩壊危険斜面は、対象の9渓流で合計206箇所抽出された。このうち、住民の要望が高く、崩壊起因の土石流により集落に甚大な被害がでる恐れがある神子沢を対象に詳細調査を実施した。詳細調査では、崩壊の危険性が高い斜面において、縦横断方向で土層強度検査棒およびSH型貫入試験機により土層厚を測定し、崩壊規模を推定した。その結果、3,300m3程度の比較的規模の大きな崩壊と、600m3程度の小規模な崩壊の2つが発生する可能性が高いことが分かった。次に、発生頻度が高いと想定される小規模崩壊が発生した場合の土石流シミュレーションを実施した。以上の土砂災害の危険性に関係する情報を図示することにより土砂災害危険度マップを作成した。
マップ作成後に行った住民説明会では、「長期的に見て安全な場所がないことが良く理解できた」、「各沢での危険度を理解するために土石流シミュレーションが必要と感じた」、「どのように避難するかを考える事が大きな課題である」などの意見がでた。これより、本調査で作成した土砂災害危険度マップは、地域の土砂災害の危険性の理解促進に貢献が出来たと言える。