日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS09] 人間環境と災害リスク

2022年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 203 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:佐藤 浩(日本大学文理学部)、コンビーナ:中埜 貴元(国土交通省国土地理院)、座長:中埜 貴元(国土交通省国土地理院)

10:00 〜 10:15

[HDS09-05] 決定木解析を用いた地震時の土砂災害発生に寄与度の大きい地震情報の推定

*遠藤 涼1岩橋 純子1中埜 貴元1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:地震、土砂災害、決定木

大規模な地震では、斜面崩壊や地すべり、土石流等の土砂災害が発生することがあり、それらがどこでどれくらい発生したかなどの全体的な災害規模をいち早く把握することは、行政機関などの災害対応における迅速な初動対応において重要である。土砂災害を引き起こす様々な要因は素因と誘因に大別され、素因としては地形や地質、地質構造等が挙げられる(千木良、2006など)。誘因として加速度(内田ほか、2004など)や震度(伊藤ほか、2009など)などが指摘されているが、それぞれの誘因の寄与度については十分に検討されているとは言い難い。そこで、本発表においては、特に地震後に得られる地震情報と土砂災害発生との関係に着目し、決定木解析を用いて地震情報の各要素の寄与度を推定し、特に寄与度の高い誘因要素の抽出を試みた。
 解析対象としたのは、2000年以降に発生した最大震度6弱以上の地震である。ただし、解析には余震と考えられる地震を除いた計27地震を用いた。要素の推定には、データマイニングの一つである決定木を用いた。説明変数は、最大震度・最大加速度・最大水平変位・気象庁マグニチュード・震源の深さ・地震の発生場所(内陸断層・海溝)・発生タイプ(正断層・逆断層・横ずれ断層)とした。被説明変数は、国土交通省・内閣府で集計された土砂災害の件数を10件および100件を閾値として3区分に分類したものを用いた。
 解析の結果、最大水平変位、震源の深さ、地震の発生場所(内陸断層型・海溝型)の順に寄与度が大きく、これらの要素を用いると、土砂災害発生件数のオーダーを概ね推定できる可能性があることがわかった。すなわち、上記の寄与度の大きいデータを地震発生直後にいち早く取得することが迅速な初動対応につながる可能性がある。

【参考文献】
千木良雅弘(2006) 地すべり・崩壊の発生場所予測-地質と地形からみた技術の現状と今後の展開-.土木工学会論文集C, 62, 4, 722-735.
内田太郎・片岡正次郎・岩男忠明・松尾修・寺田秀樹・中野泰雄・杉浦信男・小山内信智(2004) 地震による斜面崩壊危険度評価手法に関する研究.国土技術政策総合研究所資料、204.
伊藤英之・小山内信智・西本晴男・臼杵伸浩・佐口治(2009)地震による崩壊発生箇所と震度分布との関係.砂防学会誌、61, 5, 46-51.