日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 津波とその予測

2022年5月25日(水) 13:45 〜 15:15 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:室谷 智子(国立科学博物館)、コンビーナ:対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、座長:近貞 直孝(防災科学技術研究所)、対馬 弘晃(気象庁気象研究所)

14:15 〜 14:30

[HDS10-08] 防災科研圧力観測ネットワークに記録されたHunga Tonga - Hunga Ha’apai 火山噴火による圧力変動を用いた海面変動量の推定

*近貞 直孝1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:火山噴火、津波、V-net、DONET、S-net

防災科研では,火山噴火による空振を詳細に捉えるため,基盤的火山観測網V-netの一部に微気圧計(100Hz)を設置して常時観測を行っている(https://doi.org/10.17598/NIED.0006).また,巨大地震による津波を捉えるため,地震・津波観測監視システムDONET(https://doi.org/10.17598/NIED.0008)と日本海溝海底地震津波観測網S-net(https://doi.org/10.17598/NIED.0007)に高精度水圧計(10Hz)を設置して常時観測を行っている(DONETの敷設は海洋研究開発機構で,平成28年4月から防災科研に移管).
2022年1月15日13時過ぎ(日本時間)トンガ諸島付近のHunga Tonga - Hunga Ha’apai (HTHH)火山の噴火によって生じた気圧波が世界中の観測網で観測され,V-netに設置された微気圧計でも明瞭なパルス波が記録された.また,第1波よりは微弱であるものの,反対周りや地球を1周してきた気圧波も記録されている.さらに,陸上の気圧計によって気圧波が観測されると同時に,海底に設置された水圧計でも圧力変動が記録された.この時,S-netとDONETで記録された海底圧力変動は,海面変動による圧力変動だけではなく,海面上を通過した気圧波による圧力変動も含めて記録される.この時,気圧波の継続時間(大凡20分)に対して,海底までの圧力伝達は海水の音速(約1.5km/s)程度のため,十分に短時間で海底水圧計に記録されることになる.本講演では,海底水圧変動から気圧変動を除去し,海面変動による海底圧力変動の抽出を試みた結果を報告する.
図は,圧力観測点位置,V-netの微気圧計,S-net及びDONETの海底水圧計で得られた圧力変動である.V-netは,HTHH火山からの距離に絶対圧の位置を合わせて描画している.S-net及びDONETの波形は,観測点位置の緯度もしくは経度に合わせて描画している.また,高周波ノイズと潮汐を除去するため,因果律を満たす片側の120秒から1,800秒のバンドパスフィルタをかけている.このため,第1波の押し波の後の引波がフィルタの影響で拡大されている.V-net微気圧計の記録から,気圧波の日本近辺での伝播速度は毎秒305m程度と推定される.
本研究の一部は,JSPS科研費JP18K04674及びJP21K21353の助成を受けたものです.