日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 津波とその予測

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (15) (Ch.15)

コンビーナ:室谷 智子(国立科学博物館)、コンビーナ:対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、座長:行谷 佑一(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、室谷 智子(国立科学博物館)

11:00 〜 13:00

[HDS10-P05] 四国東部の津波ハザードカーブの感度分析と地震シナリオ数の縮小

*住田 裕亮1田中 直樹1馬場 俊孝1 (1.徳島大学大学院創成科学研究科理工学専攻)


キーワード:確率論的津波ハザード解析、ハザードカーブ、感度分析、計算負荷軽減、G-R則

本研究ではG-R則に基づいて南海トラフの津波ハザードカーブを作成した.G-R則の導出には気象庁地震カタログの南海トラフ地震の震源域内の地震のうち深さ50km以浅,M5.0以上で,1919年から2020年までのデータを利用した.なお,ここでG-R則の95%信頼区間も推定した.津波ハザードカーブに必要な多数の津波計算結果(津波DB)は次の手順で構築した.藤原ほか(2020)の3480ケースの南海トラフ域の地震シナリオを使用し,津波伝播遡上計算では,平面2次元の非線形長波式をスタッカード格子・リープフロッグ法の有限差分法で解いた.津波計算負荷軽減のため,対象地域である四国東部の沿岸域に向かって5層ネスティングを行った.最小格子は10mとした.G-R則で求めた年発生頻度と津波DBから津波ハザードカーブを作成した.G-R則の95%信頼区間に由来する津波ハザードカーブのばらつき(以下,津波ハザードカーブの95%信頼区間と呼ぶ)も評価した.
地震発生確率の扱いが異なるため単純な比較はできないが地震ハザードステーション(J-THIS)と 本研究で得られた津波ハザードカーブ(定常ポアソン過程を仮定して30年超過確率を算出)を比較したところ,J-THIS のハザードカーブの方が高確率となった.これは予想通りの違いで,J-THISが採用しているBrownian Passage Time過程と本研究の定常ポアソン過程による違いを反映していると解釈できる.
さらに,G-R則の津波ハザードカーブへの感度を調査するため,G-R則の構築における地震データの検索期間,マグニチュード(M),震源深さの条件を変更し,複数のG-R則を作成し,津波ハザードカーブを作り直した.検討したケースのうち,①検索期間を1997年10月から2020年3月までに縮小した場合, ②M>6.0の地震のみを利用した場合,③M>7.0の地震のみを利用した場合の3ケースが,はじめに求めた津波ハザードカーブの95%信頼区間から外れた.一方,震源深さを変えたすべてのケースでは95%信頼区間内に収まった.これより,検索期間やG-R則に利用する地震のマグニチュードには気を付けなければならないが,震源深さの条件は津波ハザードカーブの構築にあまり影響しないと言える.
また,津波計算負荷の軽減を目的として,地震シナリオ数の縮小についても検討した.本研究ではシナリオ数の縮小に単にシナリオを間引く手法を採用した.その結果,10分の1までシナリオ数を減らしてもオリジナルの津波ハザードカーブの95%信頼度区間に収まった.