日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 津波とその予測

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (15) (Ch.15)

コンビーナ:室谷 智子(国立科学博物館)、コンビーナ:対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、座長:行谷 佑一(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、室谷 智子(国立科学博物館)

11:00 〜 13:00

[HDS10-P09] 海底電磁力計で観測された津波波形を用いた2009年サモア沖地震の津波波源推定

*横井 陽色1馬場 俊孝1、林 智恒2藤 浩明3 (1.徳島大学大学院創成科学研究科理工学専攻、2.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻、3.京都大学大学院理学研究科附属地磁気世界資料解析センター)


キーワード:津波、海底電磁力計

1896年と1933年の三陸地震や2006年と2007年の千島列島沖地震,2009年サモア沖地震のように,プレート境界型地震とアウターライズ地震はしばしば連動して発生する傾向がある.三陸と千島のケースでは,プレート境界型地震が発生した後,しばらく経ってからアウターライズ地震が発生したが,2009年サモア沖地震ではほぼ同時に発生し,アウターライズ地震の方が先に発生している.このようにプレート境界型地震とアウターライズ地 震の連動パターンは複雑である.
 Hossen et al. (2018)は,検潮所と沖合観測所(DART)の津波波形を用いた逆解析により,2009年サモア沖地震の津波波源を提案した.しかし,検潮所で観測された津波波形の再現精度は十分ではなかった.本研究では,新たな沖合津波波形データを加えるとともに,津波計算法も高度化して,より高精度の津波波源の推定を試みた.新たに加えたデータはLin et al. (2021)により海底電磁力計で観測された磁場変動から変換された津波波形である.津波計では線形分散波式に地球の弾性変形及び海水密度成層構造を考慮した.
 逆解析に用いる小断層モデルは Hossen et al. (2018)で提案されたモデルを利用した.小断層による地殻変動を計算し,鉛直変位に海底斜面の水平変位の効果を加え,Kajiura Filterを適用して初期水位を求めた.差分法により津波伝搬を計算しグリーン関数を生成した.逆解析は最小二乗法を用いた.本解析では解を安定させるために正則化項を与えているが,データと正則化項の間の重み(λ)は,解析に用いなかった後続波における再現精度により決定した.
 最適な断層モデルにおいて,観測波形と計算波形の残差二乗和平均平方根(RMSE)は 0.0076 mとなった.Hossen et al. (2018)の断層モデルではRMSE=0.0184 mであったので,本研究により再現精度は約6割向上した.本研究の断層モデルは,Hossen et al. (2018)のモデルよりも大すべり域が少し東側に求まった.プレート境界の断層面においては,すべり域がコンパクトで東⻄方向に狭い.これは,震源の東側にある海底電磁力計により,すべり域が東⻄方向に制約されたためである.

謝辞:本研究では東京大学地震研究所共同利用の助成を受けました.本研究は東京大学情報基盤センターの富士通PRIMERGY CX600M1/CX1640M1を利用させていただきました.記して感謝いたします.