日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS11] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (14) (Ch.14)

コンビーナ:小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、コンビーナ:内田 太郎(筑波大学)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、座長:小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、内田 太郎(筑波大学)

11:00 〜 13:00

[HDS11-P04] 桜島有村川上流域における2010年から2018年の放射谷内での土砂生産場とそこでの土砂生産の実態

*佐野 泰志1清水 武志1、石田 孝司1、今森 直紀1 (1.国立研究開発法人 土木研究所)

キーワード:桜島、航空レーザ測量データ、GIS、放射谷、土砂生産

1955年以降,爆発的噴火が続く鹿児島県鹿児島市桜島は世界的にも活発な活火山の一つである。そして,噴火活動の影響を受けていない流域に比べ,2022年1月末時点でも,桜島島内の河川では少量の降雨で土石流が発生しやすい状況が継続している(例えば,国土交通省九州地方整備局大隅河川国道事務所,2022)。
 谷区間における侵食・堆積は土石流の発生やその規模に影響を与えるが,噴火活動終息後の火山地域や土砂移動の激しい流域では,谷区間のほぼ同一の位置で侵食・堆積が繰り返すことが確認されている(平川ら,2019;De Hass et al.,2020)。一方,噴火が継続し,火砕物が継続的に供給されている火山における谷区間での土砂生産の実態は十分にわかっていない。
 そこで,本研究では,桜島南東側に位置する有村川3号堰堤より上流域(以降,有村川上流域)を対象に,国土交通省が 2010年10月から2018年の10月にかけて約1年間隔で取得した9年分の航空レーザ測量データを用いて,火口付近から発達する放射谷内の土砂の侵食・堆積が繰り返される区間を抽出し,その区間の土砂生産の実態を調査した。
調査は航空レーザ測量データを用いて,8時期分の差分解析を実施し,放射谷内で侵食深または堆積深1.0m以上かつその面積が10m以上の土砂移動範囲が特に集中する区間を抽出した。また抽出した区間の縦断図を作成し河床変動を確認した。さらに傾斜量図や3次元立体図を参考に地形種の分類に基づいて抽出した区間の放射谷内の微地形を判読し,微地形の変化からそこでの土砂生産の実態を整理した。
 その結果、2010年から2018年では,火山山麓部の標高約250mから約320mの放射谷区間と,標高約310mから約350mの区間の放射谷区間およびそれに隣接する沖積錐においてほぼ同一の位置で侵食・堆積が繰り返していることが確認された。また,前者の放射谷区間における土砂移動に伴う微地形変化は,谷底部の河床変動や側岸に形成された小さな段丘の消失と再形成によるものであった。一方,後者の放射谷区間およびそれに隣接する沖積錐における土砂移動に伴う微地形変化は、2013年以降,噴火回数や降灰量と沖積錐の上流の火山砕屑丘における土砂の侵食・堆積状況に応じて,放射谷の河床変動や沖積錐の拡大と縮小によるものであった。
 以上のように,桜島有村川上流域の火山山麓部における放射谷では,ほぼ同一区間で土砂の侵食と堆積が繰り返しており,各区間の土砂生産の実態が異なることを確認できた。

謝辞
 本研究を進めるにあたり,国土交通省九州地方整備局大隅河川国道事務所から航空レーザ測量データ,噴火及び降灰量,土石流観測データ等の貴重なデータを提供いただいた。ここに記して深く謝意を表します。