12:00 〜 12:15
[HGM02-06] 鳥取大学湖山キャンパスの地下にある古砂丘の体積ーBCPに向けた地下水賦存量の見積もりー
キーワード:鳥取大学湖山キャンパス、BCP、ボーリング柱状図、古砂丘、地下水涵養量、地下水賦存量
はじめに
鳥取大学はBCPの一環として井戸掘削事業を実施している。鳥取大学湖山キャンパスの地下には古砂丘が広がっており(赤木,1972),砂丘砂は地下水の貯蔵庫となる。本研究の目的は,i) 鳥取大学湖山キャンパスにあるボーリング資料から古砂丘の広がりを調べること,ii) 古砂丘の体積から地下水賦存量を求め,年降水量による地下水涵養量や鳥取大学湖山キャンパスの水の使用量と比較することで,BCPの目処を立てることである。
調査方法
鳥取大学湖山キャンパスにあるボーリング報告書26冊に掲載されたボーリング柱状図計62本より,それぞれ古砂丘砂を判定した。その認定方法は軽石火山灰土,火山灰質シルトや火山灰質粘土と記載されている地層で覆われている礫を含まない均一な細砂・中砂層を古砂丘砂と認定した。これらの古砂丘砂のN値は25以上を占めるものが多かった。そこで,火山灰層に覆われていない均一細砂・中砂層についてはN値≧25で古砂丘砂と認定した。そしてキャンパス東部のボーリング密集部分で,南北投影断面図を作成した。
次にEsri社のArcGIS Proを用いて古砂丘のtopとbottomをサーフェス差分して古砂丘砂の体積を算出した。そして砂丘砂層の有効間隙率0.2(土木学会,1971)を用いて,古砂丘中の地下水賦存可能量を算出した。さらに坑内水位から外挿した地下水面を考慮して地下水賦存量を推定した。
結果および考察
1)古砂丘の広がり
南北投影ボーリング断面図からは,古砂丘列の高まり1つとそこから南方に緩く傾斜する砂丘が判読できた。砂丘列の高まりは標高25-30 mに至り,その南側に標高15-5 mの砂丘が続く。鳥取大学湖山キャンパスの主要部は古砂丘の上に立地しており新,砂丘砂の被覆はほとんど認められなかった。さらに南方で鳥取大学附属小中学校が位置する沖積低地に続き,ここには深さ20 mほどの沖積谷が埋没しており,この谷にはシルトと細砂の互層が確認された。またこの沖積低地の一部には火山灰層で覆われた古砂丘砂が確認された。沖積谷の侵食を免れた部分が残ったものと考えられる。このように見ると沖積層中の細砂層は古砂丘砂が浸食されて2次堆積した可能性が高い。
2)地下水賦存量と降水による地下水涵養量
古砂丘砂の底は多くのボーリング柱状図で不明であった。したがって古砂丘の体積は,少なくとも8.0×106 m3であることがわかった。北側の砂丘列を除けば,多くの地点で古砂丘は地下水で満たされている。そこでBCP井戸のストレイナー下底と孔内水位に挟まれた古砂丘砂の体積を求めたところ6.8×106 m3であり,有効間隙率を0.2(土木学会,1971)とすると,約1.4×106 m3の地下水賦存量が算出された。鳥取気象台湖山観測所における過去19年間の年平均降水量は1,653 mmであった。古砂丘上に立地する鳥取大学湖山キャンパスの面積は約50 haであり,仮に地下に浸透せずに蒸発や排水される雨水の比率である流出係数を0.9(国土交通省,2004)とすると,8.3×106 m3/yrの地下水涵養量となる。いっぽう鳥取大学湖山キャンパスの過去9年間(2011年~2019年)の水使用量の平均は,87,786㎥であった。災害等緊急時のBCP井戸の利用に関しては,十分な地下水賦存量がある。しかし持続可能な地下水利用をするには,キャンパスを透水性舗装に変えるなどして降雨の浸透率を上げる等の工夫が必要になる可能性が残る。いずれにせよ,地下水利用に際しては周辺モニタリング井戸による地下水位や水質の継続的な観測が欠かせない。
結論
鳥取大学湖山キャンパスの地下にある古砂丘は地下水タンクの役割を持ち,その分量は少なくとも140万 m3に及ぶことが明らかになった。これは湖山キャンパスの年間水使用量の16年分に相当する。従って災害などの緊急時には十分な量の地下水量といえる。しかし、地下水涵養量は水の使用量にわずかに足りない可能性が残る。今後地下水の持続可能な利用を検討するには,地下水位や水質の継続的な観測モニタリングに基づいた議論が必要になる。
鳥取大学はBCPの一環として井戸掘削事業を実施している。鳥取大学湖山キャンパスの地下には古砂丘が広がっており(赤木,1972),砂丘砂は地下水の貯蔵庫となる。本研究の目的は,i) 鳥取大学湖山キャンパスにあるボーリング資料から古砂丘の広がりを調べること,ii) 古砂丘の体積から地下水賦存量を求め,年降水量による地下水涵養量や鳥取大学湖山キャンパスの水の使用量と比較することで,BCPの目処を立てることである。
調査方法
鳥取大学湖山キャンパスにあるボーリング報告書26冊に掲載されたボーリング柱状図計62本より,それぞれ古砂丘砂を判定した。その認定方法は軽石火山灰土,火山灰質シルトや火山灰質粘土と記載されている地層で覆われている礫を含まない均一な細砂・中砂層を古砂丘砂と認定した。これらの古砂丘砂のN値は25以上を占めるものが多かった。そこで,火山灰層に覆われていない均一細砂・中砂層についてはN値≧25で古砂丘砂と認定した。そしてキャンパス東部のボーリング密集部分で,南北投影断面図を作成した。
次にEsri社のArcGIS Proを用いて古砂丘のtopとbottomをサーフェス差分して古砂丘砂の体積を算出した。そして砂丘砂層の有効間隙率0.2(土木学会,1971)を用いて,古砂丘中の地下水賦存可能量を算出した。さらに坑内水位から外挿した地下水面を考慮して地下水賦存量を推定した。
結果および考察
1)古砂丘の広がり
南北投影ボーリング断面図からは,古砂丘列の高まり1つとそこから南方に緩く傾斜する砂丘が判読できた。砂丘列の高まりは標高25-30 mに至り,その南側に標高15-5 mの砂丘が続く。鳥取大学湖山キャンパスの主要部は古砂丘の上に立地しており新,砂丘砂の被覆はほとんど認められなかった。さらに南方で鳥取大学附属小中学校が位置する沖積低地に続き,ここには深さ20 mほどの沖積谷が埋没しており,この谷にはシルトと細砂の互層が確認された。またこの沖積低地の一部には火山灰層で覆われた古砂丘砂が確認された。沖積谷の侵食を免れた部分が残ったものと考えられる。このように見ると沖積層中の細砂層は古砂丘砂が浸食されて2次堆積した可能性が高い。
2)地下水賦存量と降水による地下水涵養量
古砂丘砂の底は多くのボーリング柱状図で不明であった。したがって古砂丘の体積は,少なくとも8.0×106 m3であることがわかった。北側の砂丘列を除けば,多くの地点で古砂丘は地下水で満たされている。そこでBCP井戸のストレイナー下底と孔内水位に挟まれた古砂丘砂の体積を求めたところ6.8×106 m3であり,有効間隙率を0.2(土木学会,1971)とすると,約1.4×106 m3の地下水賦存量が算出された。鳥取気象台湖山観測所における過去19年間の年平均降水量は1,653 mmであった。古砂丘上に立地する鳥取大学湖山キャンパスの面積は約50 haであり,仮に地下に浸透せずに蒸発や排水される雨水の比率である流出係数を0.9(国土交通省,2004)とすると,8.3×106 m3/yrの地下水涵養量となる。いっぽう鳥取大学湖山キャンパスの過去9年間(2011年~2019年)の水使用量の平均は,87,786㎥であった。災害等緊急時のBCP井戸の利用に関しては,十分な地下水賦存量がある。しかし持続可能な地下水利用をするには,キャンパスを透水性舗装に変えるなどして降雨の浸透率を上げる等の工夫が必要になる可能性が残る。いずれにせよ,地下水利用に際しては周辺モニタリング井戸による地下水位や水質の継続的な観測が欠かせない。
結論
鳥取大学湖山キャンパスの地下にある古砂丘は地下水タンクの役割を持ち,その分量は少なくとも140万 m3に及ぶことが明らかになった。これは湖山キャンパスの年間水使用量の16年分に相当する。従って災害などの緊急時には十分な量の地下水量といえる。しかし、地下水涵養量は水の使用量にわずかに足りない可能性が残る。今後地下水の持続可能な利用を検討するには,地下水位や水質の継続的な観測モニタリングに基づいた議論が必要になる。