日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (12) (Ch.12)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、コンビーナ:Ki-Cheol SHIN(総合地球環境学研究所)、山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)、座長:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)、山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)

11:00 〜 13:00

[HTT18-P06] 安定同位体比分析を用いた個体レベルでのニホンザル幸島群の食性解析

*舟川 一穂1木庭 啓介1 (1.京都大学)

キーワード:ニホンザル社会、安定同位体、食性

本研究では年齢や性別など様々な社会的属性が既知であるニホンザル幸島群に対して、個体レベルで食性解析を行い、これら社会的属性が食性に与える影響を定量的に示すことを目的として行った。用いた手法は炭素・窒素・硫黄安定同位体比分析であり、対象とした個体は幸島主群に属する20個体である。分析の結果、3つの安定同位体比すべてで個体差が検出され、同じ群れ内でも食性に個体差が存在することが示された。また幸島群が摂取している食物資源の同位体比も分析し、ベイズ混合モデルを用いて各個体および個体の属性ごとに食物の摂取割合を推定した。その結果、群れ内の優劣関係が摂取割合に与えている影響は検出できなかったが、一方で年齢や性別によって食物の摂取割合に変動が生じていることが示された。具体的にはオスは海産由来の食物資源の摂取割合がメスよりも大きく、また森林由来の食物も大きかった。メスは人間が餌付け用に与えている小麦の摂取割合がオスよりも大きくなっていた。年齢では世代によって海産由来の食物資源への選好性が異なっていた。これまで種や個体群の解像度での先行研究が多数存在する安定同位体比分析による食性解析が、個体レベルの解像度でも十分に有用であり、かつ群れ内の構造を分析する手段としても用いうるということを本研究は示していると考える。