日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT19] 環境リモートセンシング

2022年5月25日(水) 09:00 〜 10:30 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)、コンビーナ:石内 鉄平(宮城大学)、座長:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

10:00 〜 10:15

[HTT19-05] 深層学習を利用した、日本国内の森林伐採“見える化”の試み

*渡辺 学1島田 政信1 (1.東京電機大学 理工学部)

キーワード:環境変動、森林監視、人工知能

本研究では、2021年春から夏の間に日本全国で起こった森林伐採箇所を深層学習と衛星画像を利用して検出し、結果を一般公開した試みについて報告する。
衛星データを用いて広域森林変化を捉え、その結果を準リアルタイムに一般公開する仕組みは、GLAD[1]、JJ-FAST [2,3]などで行われている。GLADは光学衛星(LANDSAT 7, 8, Sentinel-2衛星と、C-band 合成開口レーダ衛星(Sentinel-1)を使い、5日~12日の間隔で赤道付近(+-30度)の森林変化を捉え、変化箇所を一般公開している。JJ-FASTはL-band 合成開口レーダ衛星(PALSAR-2)を用いて、観測の3~4日後に世界78か国の熱帯林で起こった森林変化情報を公開している。しかし日本では現在のところ、身近に起こっている森林変化情報を準リアルタイムに知る事が出来るシステムは稼働していない。日本国内の林業は、木材価格の低迷や森林所有者の高齢化で、管理されない森林が増えており、一部では違法森林伐採なども報告されている。SDGsの観点からも、持続可能な森林経営が求められているが、広域森林監視を行い、森林変化箇所を一般公開するには高いコストがかかると考えられてきた。
本研究では、衛星データクラウドサービス(Google Earth Engine)から無料で入手した10m分解能のSentinel-2データを利用して、森林変化検出を行った。2019年夏~2021年夏までに観測されたデータから、雲の少ない画像を選択し、雲マスクをした上で季節ごとにまとめた。このうち、関東地方で2019年夏から2020年夏の5季節で得られた時系列データを用いて、2020年春から夏の間に起こった森林変化を捉えるための深層学習モデルの訓練を行った。深層学習は衛星画像でも最近利用例が増えているが、本研究では時系列画像を用いる事で、検出精度の向上を行っている。そのモデルを用いて、2021年春から夏の期間に47都道府県で0.25ha以上の森林変化が起こった箇所を全て検出した。その結果、6582サイトで6472.9haの森林減少が確認された。最も頻度が高く検出されたのは、0.25~0.5haサイズの森林変化箇所で、全体の46%を占めていた。検出精度は、期末画像の雲除去率に大きく依存していた。雲がほとんど除去できていた東北地方では、70.5%(福島県)~93.5%(山形県)となった。一方、期末画像で多くの雲が残っていた中国地方では、検出精度は2%(岡山県)~48.3%(広島県)であった。最も検出精度が悪かった岡山県の検出結果ポリゴンに対し、雲で誤検出されたサイトを取り除くための深層学習を適用した結果、精度は76.1%にまで向上した。
得られた森林変化場所情報は、Google mapを使って無料で一般公開するとともに、YouTube(チャンネル名:AIを使って宇宙から森林変化みつけちゃいました)を使って各県毎に森林伐採の状況報告を行った。Google Mapは、現在自分のいる場所を表示する機能がある事から、スマホ等で公開されている森林変化情報を見ながら、身近で検出された森林変化箇所にアクセスし、現場を訪問する事も簡単にできる。今回、協力者の方にGoogleの編集権限を付与した上で、現地に行って森林変化箇所の写真のアップを行う作業ができる事も確認できた。このような既存の機能を用いて、森林管理、監視への関心と積極的な参加を促す事ができる事が確認できた。発表では、無料の衛星データと深層学習で日本国内の0.25ha以上の森林変化箇所を見える化”した場合に必要であったコンピュータコスト、時間的コスト等の報告も行う。
Referenceは英文版に記載