日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT19] 環境リモートセンシング

2022年5月25日(水) 09:00 〜 10:30 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)、コンビーナ:石内 鉄平(宮城大学)、座長:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

10:15 〜 10:30

[HTT19-06] 森林内コネクティビティを明らかにする空隙のパターン分析

*加藤 顕1、青柳 寛太郎1蝦名 益仁4、早川 裕弌2堀田 紀文3 (1.千葉大学 園芸学研究院、2.北海道大学 地球環境科学研究院、3.東京大学 農学生命科学研究科、4.北海道立総合研究機構)

キーワード:レーザー、森林火災、空隙、コネクティビティ

森林を構成する樹木の空間分布は、これまで景観生態学でその空間パターンから森林の連結性(コネクティビティ)を評価してきた。また、森林の連結性は、コリドーとして風、種子、動物、物質が移動している。これまでの森林のコネクティビティの解析では、上空から取得するデータで行われており、森林内を正確に評価できていない。そこで本研究では、森林が作り出す環境である森林内空隙に注目し、そのパターンを明らかにすることを目的とする。

本研究が対象とする森林内空隙は、森林が作り出す空隙であり、従来のギャップと呼ばれる空いた空間とは異なる。ギャップは森林の連結性を大規模に変化させるが、空隙は森林がある場所での空間である。こうした空間は、上空から取得されるリモートセンシングデータで把握することは難しい。本研究では、3次元でデータが取得できる地上レーザーを用いて、森林内の詳細な3次元データを取得し、そのデータから空隙の分布を3つの指標である占有率、連結性、密集度からパターン解析を行った。また、その結果を階層的クラスタリングで類型化した。
本研究で用いたデータは、2019年に森林火災があった北海道雄武町で取得した地上レーザーデータとし、衛星画像からdNBR値を用いて、様々な焼損状態の場所を20カ所設定して3次元データを取得した。森林火災場所を解析に用いた理由として、撹乱のない森林での空隙分布は一律同じような森林になる一方で、撹乱後の森林内の空隙分布は様々な状態になるため、森林火災の被害度と比較することで、撹乱によって作り出される空間変化を把握できる。本研究ではdNBR値と類型化した空隙を比較することで、dNBRでわかる森林火災時の被害度と、その森林火災によって変化が起こった空隙空間の変化を比較した。

結果として、空隙の占有率と連結性が、森林火災の被害度に関係があった。森林火災によって優占する樹木の被度(占有率)と空隙の連結性が変わる。また、4つのグループに類型化できたことで、森林火災後の空隙のパターンを把握することができた。森林内空隙は、自然火災が頻発するアメリカやオーストラリアでは、火災によって森林が消失すると、他の植生状態に変化し、森林に戻らないことが問題となっている。森林によって作り出される空隙環境は、樹木が再生するために実生を守る空間であり、急激な気象変化の緩和、被陰効果、水分や養分の保持といった様々な効果がある。今後広域での空隙分布を明らかにし、空隙のコネクティビティを評価できるようにしたい。