日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI35] 情報地球惑星科学と大量データ処理

2022年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:村田 健史(情報通信研究機構)、コンビーナ:野々垣 進(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、本田 理恵(高知大学自然科学系理工学部門)、コンビーナ:深沢 圭一郎(京都大学学術情報メディアセンター)、座長:本田 理恵(高知大学自然科学系理工学部門)、村田 健史(情報通信研究機構)

09:00 〜 09:15

[MGI35-01] 二重偏波フェーズドアレイレーダを用いたLSTMによる3D-Nowcast手法の開発

*川島 康平1KIM DONG-KYUN1妻鹿 友昭1和田 有希1牛尾 知雄1Baron Philippe2、吉川 栄一3林 修吾4菊池 博史5 (1.大阪大学、2.情報通信研究機構、3.宇宙航空研究開発機構、4.気象研究所、5.電気電子通信大学)


キーワード:Convolutional LSTM、ナウキャスト

短時間の雨雲の動きを予測するために気象レーダで観測した雨雲を元に30秒間隔で三次元空間の予測を行う3D-Nowcast手法が開発されている。しかしこれは移流ベクトルをもとに予測を行う手法であり時間が経つにつれて精度が急激に低下するという課題がある。本研究ではConvolutional LSTM(Long Short-Term Memory Network)に基づく深層学習手法を使用することで3D-Nowcastで大きく精度が低下している10分後の予測精度の改善を試みる。LSTMとはRNN(Recurrent Neural Network)の一種である。
本研究では埼玉大学に設置されているマルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ(Multi Parameter Phased Array Weather Radar, MP-PAWR)で観測したデータを使用する。2019年08月01日15時頃、埼玉県近傍で発生した対流性降水セルに対して提案手法を用いた降水予測実験を行う。本レーダを使用することで、わずか30秒で雨雲の3次元構造(x:40km, y:40km, Z:15km)を100mの垂直水平方向の距離分解能で観測することができる。このレーダ反射因子の観測結果と3D-Nowcastによる予測結果を過去の観測結果を時系列データとして学習することができるLSTMに入力した。本研究では雨雲が急激に発達する1~2時間の観測結果を使用することで、雨雲の発達傾向を学習させるためにLSTMを使用する。
予測結果の精度検証のために3D-Nowcastによる予測と畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network, CNN)による予測と比較することで評価した。評価指標として相関係数、平均誤差、 Probability of detection (POD)を使用した。PODとは観測結果が閾値を超えた場合において、閾値を超えると予測することのできた割合である。今回は閾値として37.5dBZと10dBZを使用する。それぞれ降雨強度では10.1 mm/h、0.2mm/hに相当する。
 今回のモデルを使用することで閾値37.5dBZにおけるPODは0.16、閾値10dBZにおけるPODは0.93、相関係数は0.65、平均誤差は2.98(dB)を示した。