日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI35] 情報地球惑星科学と大量データ処理

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (38) (Ch.38)

コンビーナ:村田 健史(情報通信研究機構)、コンビーナ:野々垣 進(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、本田 理恵(高知大学自然科学系理工学部門)、コンビーナ:深沢 圭一郎(京都大学学術情報メディアセンター)、座長:深沢 圭一郎(京都大学学術情報メディアセンター)、野々垣 進(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、本田 理恵(高知大学自然科学系理工学部門)、村田 健史(情報通信研究機構)

11:00 〜 13:00

[MGI35-P08] LoRa通信とGoProカメラを利用した超小型係留気球による夜光雲観測のための試験飛揚

*高田 拓1、須原 廉1石井 智士2鈴木 秀彦2 (1.東京都立産業技術高等専門学校、2.明治大学)

キーワード:LoRa、GoPro、夜光雲、係留気球

地球の中間圏界面(高度85 km程度)に発生する夜光雲を観測するために、超小型係留気球観測システムの開発と実証を行っている。本観測システムで重要な役割を担っているのが、長距離通信が可能なLoRa(Long Range)規格による無線通信機と、アクションカメラとして知られるGoProカメラである。2021年7月に北海道で実施した夜光雲のための試験飛揚の結果を基に、LoRa通信機とGoProカメラの実証例として、紹介する。
夜光雲は、夏半球の高緯度で発生するが、近年北海道で観測される事例があり、その発生確率分布を得ることが、超高層への地球温暖化物質の輸送の観点から重要となっている。ただし、北海道での夏至を挟む1か月程度の期間は、高度1~2 km程度に下層雲が発生しやすく、地上からの夜光雲観測を継続的に実施することが難しい。そのため、下層雲にカメラ視野を遮られずに観測するため、1~2 km程度の高度に係留気球を飛揚させて、観測することを試みている。係留気球は、地上からの索でつながっており、係留索の繰出しと巻取りで到達高度を制御するため、観測装置の回収率が高い。また、短時間であれば、ゴム気球やヘリウムを再利用することが可能であり、コスト削減の利点がある。
気球の状態把握のため、920 MHz帯のLoRa送信機を気球側に搭載し、地上の受信機で受けたデータをリアルタイムに監視することで、気球実験の運用を進めている。LoRaは、特定小電力無線のため無免許で利用でき、研究目的の利用がしやすいが、データ伝送量に制限がある。本試験飛揚では、気球の位置・姿勢情報、温湿度、気圧などの情報をアスキーデータとして送信しており、撮像画像はカメラ回収後に地上で取得している。また、今回使用しているLoRa通信機では、見通し50 km以上での通信が可能なため、万が一、係留索が断絶した場合であっても、気球位置の把握が可能となっている。
GoProカメラでは、一定の時間間隔で撮像するタイムラプスモードと動画モードを利用している。GoProカメラでは、電子手ブレ補正などにより、カメラにある程度の動きがあっても、鮮明な画像を取得できる。GPS内蔵のため、タイムラプスモードでは、撮像時刻ごとのGPS位置情報が取得できる。また、動画モードでは、フレームレートごとに、GPS位置情報に加えて、加速度値や角速度値が得られる。計測値の厳密性は欠くものの、簡易的あるいは安価に計測を行う際には、科学計測においても、非常に強力なツールとなると考えている。