日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] Interdisciplinary studies on pre-earthquake processes

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (31) (Ch.31)

コンビーナ:服部 克巳(千葉大学大学院理学研究科)、コンビーナ:劉 正彦(国立中央大学太空科学研究所)、Ouzounov Dimitar(Center of Excellence in Earth Systems Modeling & Observations (CEESMO) , Schmid College of Science & Technology Chapman University, Orange, California, USA)、コンビーナ:Huang Qinghua(Peking University)、座長:服部 克巳(千葉大学大学院理学研究科)、Ouzounov Dimitar(Center of Excellence in Earth Systems Modeling & Observations (CEESMO) , Schmid College of Science & Technology Chapman University, Orange, California, USA)、劉 正彦(国立中央大学太空科学研究所)、韓 鵬(南方科技大学)

11:00 〜 13:00

[MIS10-P03] MSSA(マルチチャンネル特異スペクトル解析)を用いたULF電磁場信号の弁別について:グローバル信号の抽出と残差信号の性質

*金子 柊1茂木 透2吉野 千恵2服部 克巳2,3,4 (1.千葉大学大学院融合理工学府、2.千葉大学大学院理学研究院、3.千葉大学環境リモートセンシング研究センター、4.千葉大学災害治療学研究所)

キーワード:MT法、MSSA(多変量特異スペクトル解析)、信号弁別、房総半島、ULF帯

2014~2016年に, 房総半島でMT(地磁気地電流法)探査が行われた。自然電磁波を利用するMT法では, 太陽起源の地球磁場に変動に対して地球内部に発生する電磁誘導の原理を利用して地球内部の電気的性質(比抵抗構造)を推定する。したがって, ソースとしての外部磁場を精度よく求める必要がある。房総半島のように人工雑音が大きな場所では, 静穏な場所の参照磁場を利用して, ソース磁場に含まれる雑音の影響を低減する必要がある。一方, 地震短期予測研究におけるULF電磁場変動は, ある規模以上の地震との統計的有意相関や前兆的変動が担保されてきており, 短期予測を実現するパラメータとして有望視されている。一般に観測されるULF電磁場には強度の強い太陽起源の変動が存在し, これを効果的に除去する手法の開発が望まれる。そこで, マルチチャンネル特異スペクトル解析(MSSA)を用いた, 時間領域での雑音除去法を新たに開発した。MSSAは, Cチャンネルの時系列データを, 窓長個を列数として1データずつずらして作成した軌道行列を特異値分解することにより, (C×窓長)個の主成分に分解する手法である。基底関数が不要なため, 非定常な信号を含むデータには有用である。
ここでは, 7成分(Hx, Hy, Hz, Ex, Ey, Rx, Ry:H, E, R はそれぞれ, 観測点磁場, 観測点磁場, 参照点磁場を表し, x, y, zはそれぞれ南北, 東西, 鉛直成分を表す)の短周期信号(周期約40~約300秒)を対象とした場合の, 本手法の概要を述べる。
1. 生データにMSSAを適用し, 各成分を(7×窓長)個の主成分に分解する。
2. 分解した主成分のうち, 長周期信号を含む主成分を除き, 短周期信号を持つ主成分を足し合わせ, デトレンド時系列を作成する。
3. デトレンド時系列にMSSAを適用し, 各成分を(7×窓長)個の主成分に分解する。
4. 分解した主成分のうち, 主成分の振幅の大きいものに注目し, 電磁場間の相関の高い主成分を選択し, 足し合わせ, 電磁場信号時系列をそれぞれの成分について作成する。
本手法を房総半島の実データに適用し, 効果を確認したところ, 太陽起源のグローバル信号に対応する成分と, それ以外に対応する残差成分に分解することができた。具体的には, 磁場データでは1nT程度のグローバル信号以外の信号が抽出でき, 電場データでも誘導電流の効果をある程度低減できたといえる。また, 本手法で推定したグローバル信号について, Robust Remote Referenceを用いて, MT応答関数を推定した結果, 安定した見かけ比抵抗が得られたため, 本手法によって弁別された信号のうちグローバル信号は, もっともらしいグローバル信号であることがわかった。したがって, 本手法はULF電磁場変動に含まれるグローバル信号を除去する信号弁別法として有効な手法といえる。講演では, 特にグローバル信号と残差信号の性質について発表する予定である。