日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS15] 山の科学

2022年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、コンビーナ:佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、コンビーナ:今野 明咲香(常葉大学)、座長:佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)

09:00 〜 09:15

[MIS15-01] 山梨県身延町の天守山地雨河内川で発見された完新世中期の大規模地すべり

*苅谷 愛彦1木村 恵樹2 (1.専修大学文学部環境地理学科、2.専修大学大学院文学研究科)

キーワード:地すべり、14C年代測定、南部フォッサマグナ、古地震、活断層

駿河トラフに近く,内陸活断層にも接する南部フォッサマグマの山地には多数の大・中規模斜面崩壊地が存在し,地形発達史や年代が解明されているものもある.本研究では,これまで資料がなかった天守山地雨河内川流域(山梨県身延町)で踏査を行い,斜面崩壊の移動体に含まれる材化石の年代値を得た.雨河内川は毛無山(1945m)西面を流域に持つ急流河川で,流域最高点は1904m,同最低標高点は約220m,流路長は約6.5kmである.流路半ばの右岸に当初推定移動体面積が1.3×105 m2の岩盤すべり型斜面崩壊地があり,移動体の一部は左岸下部谷壁へ載る.露頭観察によれば,移動体の層厚は最低10m程度あるとみられ,本斜面崩壊は大規模クラスの下位にあたる.移動体末端の地点1(北緯35度26分8秒,東経138度30分16秒)では渓岸の連続露頭で移動体構成層が観察できる.同層は淘汰不良の岩屑からなり,円磨されていない凝灰岩質岩片を多量に含む.シルト-粗砂サイズの基質に富み,岩屑全体が半固結している.岩屑は圧縮変形した樹幹を含み,うち2点(AME1,AME2)の最外部分の年代測定を行った.AME1は5694±29 14C=6560~6400 IntCal20 BP(2σ),AME2は5662±28 14C=6530~6320 IntCal20 BP(同)を示した.較正暦年は6530~6400 cal BPで重合し,この期間に斜面崩壊が発生したとみられる.この期間には富士川河口断層帯で古地震活動があったとされ,関連を検討する必要がある.なお,雨河内川流域に近接して更新世後期や完新世の大規模地すべりが発達する.