日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS18] 古気候・古海洋変動

2022年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 304 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:長谷川 精(高知大学理工学部)、コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、山本 彬友(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、コンビーナ:山崎 敦子(九州大学大学院理学研究院)、座長:長谷川 精(高知大学理工学部)

13:45 〜 14:15

[MIS18-01] 21世紀後半までの降水量変化予測のEmergent Constraints

★招待講演

*塩竈 秀夫1渡部 雅浩2金 炯俊3,4,5廣田 渚郎1 (1.国立環境研究所、2.東京大学大気海洋研究所、3.Moon Soul Graduate School of Future Strategy, Korea Advanced Institute of Science and Technology、4.Department of Civil and Environmental Engineering, Korea Advanced Institute of Science and Technology、5.東京大学生産技術研究所)

キーワード:気候変動、不確実性低減

気候モデルによる将来変化予測には、モデル間のばらつきがあり、予測不確実性の低減が重要になるが、そのための方法としてEmergent constraint (以下EC)が注目を集めている。ECでは、気候モデルの将来予測実験と相関の高い現在気候の指標を見つけ出し、その関係性の物理的メカニズムを理解した上で、観測値から外れたモデルは将来予測の信頼性も低いと評価する。これまで、世界平均気温予測の不確実性を低減するためのEC研究は数多く行われ、成果を上げてきた。一方、世界平均降水量変化予測の不確実性に関しては、これまで誰もその不確実性を低減することが出来なかった。降水量変化予測のECが難しかった最大の原因は、過去の降水量トレンドに温室効果ガス濃度増加だけでなくエアロゾル排出量増加の影響が多く含まれていることである。温室効果ガス濃度増加による将来の降水量変化と過去の変化の要因が異なるため、過去の変化から将来予測の不確実性を低減するための情報を得ることが困難であった。
我々は、世界平均エアロゾル排出量がほとんど変わらず気温や降水量のトレンドに影響しない期間(1980-2014年)に着目して、モデルと観測のトレンドを比較することで、エアロゾル排出量増加の影響を受けずに温室効果ガス濃度増加に対する気候応答の信頼性が評価できると考えた。その結果、中程度の温室効果ガス排出シナリオにおいて、67の気候モデルは19世紀後半から21世紀後半に降水量が1.9-6.2%増加することを予測していたが、モデルの温室効果ガスに対する気候応答の信頼性を考慮することで、降水量増加の予測幅の上限の6.2%を5.2-5.7%へ引き下げることができた。また予測の分散も8-30%減らすことができることを示した。本研究によって、気温だけでなく降水量も予測不確実性を低減できるようになったことで、影響評価や気候変動対策の政策決定者に対して、より正確な情報を提供できると期待される。