日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS18] 古気候・古海洋変動

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (30) (Ch.30)

コンビーナ:長谷川 精(高知大学理工学部)、コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、山本 彬友(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、コンビーナ:山崎 敦子(九州大学大学院理学研究院)、座長:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)

11:00 〜 13:00

[MIS18-P19] 南大西洋Falkland Plateauで掘削されたDeep Sea Drilling Project Site 511における白亜紀中期アプチアン–アルビアン境界の高解像度炭素・オスミウム同位体比層序

*松本 廣直1黒田 潤一郎1、白井 厚太朗1 (1.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:オスミウム、アプチアン–アルビアン境界

白亜紀前期Aptian–Albian境界には海洋無酸素事変(Oceanic anoxic event: OAE)1b、温暖化、白亜紀で最大規模の浮遊性有孔虫の絶滅といった様々な環境変動が発生していた。これまでのAptian–Albian境界の古環境研究は主にテチス海の堆積層序を用いておこなわれていたが、高緯度域の地質記録は非常に限られていた。Deep Sea Drilling Project (DSDP) Site 511は南大西洋のFalkland Plateauで掘削された海洋掘削コアで、白亜紀前期Aptian–Albian境界を連続的に記録している数少ない堆積層序の一つである。海洋の貧酸素化等OAE1bに特徴は発見されていないものの、浮遊性有孔虫層序から大まかにAptian–Albian境界が決定されている。しかしながら、化学同位体比層序が欠如していることからAptian–Albian境界の正確な場所は決定されていなかった。本研究ではこのコアの詳細なオスミウム・炭素同位体比層序を構築し、テチス海のセクションとの正確な層序対比と当時の環境変動について議論を行った。本研究の結果から、Core 55、section 4のMicrohedbergella renilaevisの初産出層準付近において炭素同位体比の鋭い負異常が見られた。これはテチス海のAptian–Albian境界の特徴と一致しており、このインターバルがAptian–Albian境界である可能性を示唆している。またAptian–Albian境界を境にオスミウム同位体比が大陸の値に大きく近づくことが判明し、これらはテチス海・太平洋で明らかにされているオスミウム同位体比の特徴と一致している。この時期には低緯度域で温暖化が発生したことが示されていることから、大陸風化が強化されて海洋のOs同位体比が大きく大陸の値に近づいた可能性がある。またこの付近にはMarcasiteの数cmの巨晶が存在しており、当時のインド洋に貧酸素化・酸性環境が広がっていた可能性がある。この時期には南半球の高緯度域陸上でKerguelen海台形成に関わる火山活動が発生していたことを考えると、火山活動に伴う温室効果ガスの放出が、これらの環境変動の有力な原因と考えられる。