日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] 地球科学としての海洋プラスチック

2022年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 106 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、コンビーナ:川村 喜一郎(山口大学)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、コンビーナ:土屋 正史(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門)、座長:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、川村 喜一郎(山口大学)

09:40 〜 09:55

[MIS19-03] 海上での海洋プラスチックの集積に影響を与える鉛直対流の研究

*千葉 柊華1,8高橋 幸弘2,8成瀬 延康3,8堅田 凜平4,8、勝濱 直椰5,8平田 憲6,8、藤田 滋7,8 (1.札幌日本大学高等学校、2.北海道大学・大学院理学院・宇宙理学専攻 、3.滋賀医科大学 医学部医学科 、4.明治大学農学部、5.鹿児島大学農林水産学研究科、6.北海道大学理学部、7.日本大学生物資源学部獣医学科、8.スーパーサイエンティストプログラムプラス)

キーワード:海洋プラスチック、鉛直対流速度、集積メカニズム

年間800万トンのプラスチックが海洋に流出しているとされているが、その98%は行方がわかっていないと言われている。このプラスチックに生物が絡まったり、紫外線や寒暖差により劣化、破砕したプラスチックゴミを生物が誤飲してしまったり、化学物質が流出し環境汚染の原因ともなりうるため、海洋に流出したこれらのプラスチックを効果的に回収する方法が求められている。海洋プラスチックの集積箇所は、ドローンや航空機などで観測可能な海岸や入江といった陸上に近い領域については知見が集まりつつあるものの、海上に流出したプラスチックの離合集散や移動メカニズムについての研究は、緒に就いたばかりである。これらの研究を進め、効率的な回収方策や流出防止策をたてるには、知見が全く足りていない。過去の関連研究には、衛星を用いて海上の漂流物の追跡や、それらの軌道や海流を基にした海洋プラスチックの集積のシミュレーションがある。しかし、それらのプラスチックは数十センチ以上の大きさであり、海上流出するプラスチックの大多数がマイクロスケールであることを考えると、小さなプラスチックの集積メカニズムの理解こそ効果的回収法の確立には重要である。また、理論的には、海流の収束部や、鉛直下向きの対流が発生している海面でゴミが凝集すると考察されている。ただし、流出するプラスチックの材質、密度、大きさなどにより、集積されるために必要な鉛直対流の流速については異なるはずであるが網羅的な知見はなく、それらの条件毎に集積に必要な鉛直対流の流速を実験的に明らかにすることには大きな意味がある。

本研究では、海洋プラスチックの集積に影響を与える鉛直対流の流速を実際のプラスチックを用いて実験的に明らかにすることを目的とした。W20㎝×D20㎝×H20㎝の水槽にプロペラ部分を上向きにした水中モーターを両端に設置し、鉛直対流を発生させた。海洋マイクロプラスチックを模して水面に浮かぶプラスチックとして、比重が0.96g/㎤のφ0.26㎝×H0.28㎝の円柱状ポリエチレンビーズを用いた。これらのビーズには青い色が付けられており、それらの動きをビデオカメラで撮影することにより、水面上での集積の様子を記録した。ビーズは水中モーターの数にかかわらず、鉛直下向きの流れが発生している部分に集積し、その鉛直対流の流速については約0.39km/hとなった。材質や密度・大きさの異なるプラスチックに対しても同様な実験を行い、集積に必要な鉛直対流の流速に関する知見を得た。